第52章 成長の道

元々長谷川千怜はそれが朝比奈初から買ってもらったものかどうか確信が持てなかったが、箱の配送ラベルを見て、そこに目立たない購入者のニックネーム「初」と書かれているのを見つけた。

「……」これは朝比奈初に違いない。

彼女のWeChatの名前も「初」だ。

突然朝比奈初からスチーム式アイマスクをもらった千怜は驚きと喜びでいっぱいだった。「彼女って本当に人の心をつかむのが上手いわね。でも私、こういうの本当に弱いんだよね」

千怜は嬉しそうにアイマスクをしまい、特に携帯を取り出して初にお礼のメッセージを残した。

送信して戻ると、ちょうど長谷川彰啓のWeChatが下に表示されていて、それを見た彼女は顔中に嫌悪感を浮かべた。

今や彼女のお小遣いは朝比奈初が提供してくれるようになり、もう彰啓の顔色を伺う必要はなくなった。これで彰啓は彼女にとって価値のない存在になった。

「長谷川彰啓だろうが何だろうが、みんな消えてしまえ。2000元で私を脅そうだなんて?夢でも見てろ」千怜はそのメッセージのチャットページを開き、一連の操作で彰啓をブラックリストに入れた。

その頃、朝比奈初たちはすでに最初の家を見つけていた。

この家は比較的立地条件が良く、交通の便も良いだけでなく、美しい半島も見える。

初はスーツケースを持ち上げ、階段を上って家の中を見に行こうとした。

長谷川一樹は彼女がすでにスーツケースを持ち上げ、上に向かおうとしているのを見て、突然初を呼び止めた。「もう少し見てみない?」

「何をもっと見るの?ここはとても良いと思うわ。高台にあって、山や島や海が見えるし、日の出や日の入りも見えるかもしれないわ」

初がスーツケースを持って上がろうとした時点で、一樹は彼女がここに決めたことを悟った。

「わかったよ」一樹は最終的に妥協し、彼女の言うことを聞くことにした。

そう言った後、静かに手を伸ばして初のスーツケースを取り、彼女の代わりに持ち上げた。

初は手が急に軽くなったのを感じ、振り返ると自分のスーツケースがすでに一樹の手の中にあった。

【朝比奈さんは嬉しいでしょうね、この子も大きくなったわ】

【お坊ちゃまも分別がついてきたね、朝比奈さんのスーツケースを持ってあげるなんて】

【なんか感動するわ、お坊ちゃま。大物の足を引っ張るのが分かってきたのね】