朝比奈初は手袋をはめると、麻袋を持って遠くへゴミを探しに行った。
遠景のビーチは荒涼としている以外、あまりゴミが多いようには見えなかったが、カメラが出演者の視点に沿って移動すると、視聴者ははっきりとゴミを確認できた。
砂浜には多くの木片やペットボトル、発泡スチロール板、破れた漁網、ビニール袋などが埋もれており、出演者たちがこれらのゴミを掘り出すと、生配信の視聴者たちは驚愕した。
【うわぁ、さっきまでここ結構きれいだと思って、拾うゴミもあまりないだろうと思ってたのに、砂の中にこんなに有害なゴミが隠れてたなんて】
【このミッションはとても意義があるね。番組側も海洋環境保護をテーマに取り上げて、私たち視聴者にも良い価値観を伝えている】
【みんな、海に行ったときはゴミを絶対に捨てないでね。そうしないと海水汚染が進んでしまうから】
5人の出演者たちは海風を受け、照りつける太陽の下、砂浜のゴミが隠れている可能性のある場所を丁寧に探した。全員が頭を下げて作業に集中し、わざわざカメラを意識することはなかった。
長時間かがんで頭を下げていたため、みんな腰を伸ばすことができないほど疲れていた。ゴミを拾い終えると、その場にしゃがんで休憩し、また続けた。
朝比奈初は足元の紙くずを拾い終え、頭を上げて広大な砂浜を見渡した。前方のエリアはまだ清掃が済んでいなかった。
この砂浜はあまりにも広いため、短時間で完全に清掃するのは無理だろうと彼女は考えていた。
視線をゆっくりと戻す中で、ふと気づくと、番組スタッフが砂浜に仮設テントを設置し、監督や他のスタッフたちがその中で涼んだり、おしゃべりしたりしていた。
朝比奈初の視線が突然彼らに留まり、思わず美しい瞳を細め、その眉目には複雑な感情が浮かんでいた。
しばらくして、彼女は手に持ったゴミ袋と拾い棒を持って監督のところへ向かった。
監督は直前まで同僚と談笑していたが、朝比奈初が目の前に立っているのを見ると、急に声を潜め、顔から笑みも消えた。
監督は朝比奈初が無表情で自分を見つめ、その眼差しがやや鋭いことに気づいたからだ。
監督は愛想笑いを浮かべて言った。「どうしました?朝比奈先生」
朝比奈初は表情を変えずに言った。「監督、私たちに加わりませんか?環境を守るのは皆の責任です」