第217章 子供

テーブルの上に現れたミルクティーを見て、朝比奈初はゆっくりと顔を上げて長谷川一樹を見つめ、眉と目に薄い疑惑の色が浮かんだ。

彼女が自分の意図を理解していないのを見て、一樹は再びミルクティーを初の方へ押し、穏やかに言った。「飲んで。」

初は表情を変えずに答えた。「ありがとう、喉は渇いてないわ。」

一樹は隣の椅子を引いて彼女の横に座った。これは彼が初をこんなに黙り込んでいるのを見た初めてのことで、彼女の感情には少し落ち込んだ様子が見られた。

午後ずっと、一樹は客がいない時だけ店内をうろつく初の姿を見かけていた。その後、初が出前に出かけ、店内の客が増えてくると、みんな仕事に集中するようになった。

一樹はぼんやりと覚えていた。初が最後に出かけた時、戻ってくるまでにかなり時間がかかったような気がする。

彼は初がその間に何か問題に遭遇したのだろうと察していた。そうでなければ、彼女が今こんなに心配そうな状態になるはずがない。

初は彼が座ってから自分と一緒に黙っているのを見て、思わず尋ねた。「どうしたの?何か言いたいことでもあるの?」

一樹はさっきまで彼女をどう慰めようか考えていたが、言葉をまとめる前に、初に目的を見破られてしまった。

見抜かれた後、一樹はもう遠回しにするのをやめた。彼はテーブルの上のミルクティーを見下ろし、軽く咳払いをして平静に言った。「甘いものを飲むと、気分が良くなるよ。」

初は少し可笑しそうに彼を見た。「誰が気分が悪いって言ったの?」

初がまだ彼に向かって無理に笑えるのを見て、一樹は彼女の気分が悪いわけではなく、体調が優れないのかもしれないと思った。

「じゃあミルクティーはやめて、お湯でも飲んだら?」彼はその冷たいミルクティーを持って立ち上がり、奥に戻って彼女にお湯を入れに行った。

初は「……」

【さっきまで彼が優しい男だと思ったのに、次の瞬間「お湯でも飲んだら」って言った時、本当に典型的な鈍感男子だよねwwwwc】

【長谷川のこのおっちょこちょいなところ、なぜか私には好感が持てるわ】

【言われてみれば、一樹の察しはけっこう良いよね。カウンターが暇になった途端、すぐに朝比奈のところに来て、彼女の気分が良くないのを察して、わざわざミルクティーを持ってきたんだから】