第104章 姑の窮地を救う

長谷川家は汐見市に多くの事業を持っており、この一等地に長谷川家の存在は欠かせない。むしろ、誇張なしに言えば、ほぼすべての業界に関わっていると言えるだろう。

長谷川千怜のペースに合わせて、彼女たちはすぐにスーパーマーケットを回り、生活必需品を購入し、配送を手配した。

「今日はあなたに見識を広げてもらうわ。私たち長谷川家がどれだけ強大か知ってもらうために」

このショッピングセンターには多くのブランドショップが入居しており、そのほとんどが長谷川家の傘下にある。基本的にどの店に入っても顔認証で支払いができる。

朝比奈初は千怜に連れられて、高級オーダーメイド専門のエリアへ向かった。見渡す限り、ショーウィンドウには高級品ばかりが並んでいる。

エレベーターを出るとすぐに、千怜は足を踏みしめ、大きく手を振りながら初に言った。「見た?これは私の兄が君のために築き上げた帝国よ」

千怜は普段、授業をサボって外出するときはここには来ない。知り合いに会って長谷川彰啓に告げ口されるのを恐れているからだ。

今日は珍しく堂々とここに来られるので、初を連れて胸を張って店内に入らなければならない。

二人が最初に入ったのは衣料品店だった。店員は千怜と初が来るのを見ると、積極的に接客に出た。「長谷川夫人、三小姐、どうぞお入りください」

「長谷川夫人?」千怜は少し驚いて初を見つめ、疑問を口にした。「あなた、ここに来たことあるの?」

初は「私も知らないから聞かないで」という表情を浮かべた。突然の状況に対しても、彼女は決して動揺することはない。

千怜は首をかしげながら、隣の店員に向かって尋ねた。「彼女が長谷川夫人だって知ってるの?」

店員は答えた。「長谷川夫人は最近、二少爷と一緒に番組を収録されていて、とても話題になっています。私たちの会社は皆身内ですから、社長夫人が朝比奈さんだということは知らない人はいませんよ」

彰啓の結婚は突然のことで、家族にも十分に知らせる時間がなかった。現在のところ、長谷川家の状況をよく知る上流社会の人々以外には、外部に情報が漏れる経路はない。

長谷川一樹はデビュー前、家族のプライバシーを守るため、家族の詳細を会社に報告していなかった。

初はバラエティ番組に出演し、露出も多いが、現在のところネット上では彰啓の身元を特定できたファンはいない。