この指輪のペアは半年前、長谷川彰啓が海外のビジネスイベントに参加した際、ある海外のジュエリーデザイナーと知り合い、後にその人が特別にデザインしたこの世に一つだけのペアリングを彼に贈ったものだった。
当時、彼は結婚のことなど考えていなかったので、このペアリングを受け取った時もあまり気にしていなかった。まさか間もなく既婚者になるとは思いもよらなかった……
写真を見終えた彼は、長谷川千怜に返信した:【家は見つかった?】
彰啓は数分待ったが、千怜からの返信がなかったので、もう見るのをやめた。
先日、朝比奈初が彼と少し話し、時間があれば千怜を連れて家を見に行くと言っていた。おそらく今日のことだろう。
この数日で千怜が引っ越すことを考え、彰啓は管理人に、彼女が引っ越した際には近くに数人の見張りを配置し、彼女の身の安全を確保するよう指示した。
——
千怜はこの食事をとても満足して食べていた。ここ数日は大学の食堂で食べていたので、今は何を食べても美味しく感じた。
「このカレー牛スペアリブ、すごく美味しいよ。食べてみて」
千怜は二切れ食べた後、自ら初に一切れ取り分けた。
「ありがとう」
初は一口食べてみたが、このスペアリブは少し乾燥していて、肉も少し硬く、食感にかなり影響していると感じた。
「美味しい?もう一切れどう?」千怜は彼女が一切れ食べ終わるのを見て、期待に満ちた目で見つめた。
千怜が箸を伸ばしてもう一切れ取ろうとしたとき、初は手を振って、取らないように合図した。
初は料理が普通だと思い、なぜこの店がそんなに人気なのか分からなかった。
彼女がほぼ食べ終わったのを見て、初は背後のバッグを手に取り、立ち上がって千怜を見て言った。「ちょっとトイレに行ってくるね」
千怜はコーラを一口飲み、コップを置いてから口を開いた。「どうぞ」
初はしばらく席を外し、戻ってきたときに思いがけず斎藤彩に出くわした。
彼女もこのレストランで食事をしており、向かいには一人の男性が座っていた。年齢は彩とほぼ同じくらいに見え、二人は楽しそうに過ごしていた。
彼らは楽しく会話し、雰囲気も良かったが、彩が初を見つけた瞬間、彼女の目の中の笑みは消えた。
先ほど初は別のテーブルを回って来たが、通路にウェイターが料理を運んでいるのを見て、こちらに来たのだった。