長谷川彰啓は朝比奈初のこちら側の状況にあまり注意を払わず、彼女が自分で好きにするに任せていた。
一般的に専門家でない人はこのような報告書を見ることができないが、初はあきらめる気配を見せなかった。
初は同時に複数の報告書を持って対応するデータを比較し、それをゆっくりとメモしていった。
彰啓がパソコンを閉じ、テーブルの上の報告書を見ようとしたとき、初がまだ頑張っており、特に真剣に見ていることに気づいた。
もともと彼は初が2分ともたないだろうと思っていたが、彼女がこれほど熱心に見ているとは予想外だった。
彰啓は少し位置を移動し、自ら彼女の隣に座り、視線を彼女の手にある報告書に向けて、好奇心を持って尋ねた。「何か問題を見つけた?」
彼女が二つの報告書を持って比較しているのを見て、これらのデータについて何か気づいたようだった。
初は手にした報告書を持って彰啓の方に近づき、一緒に見始めた。
彰啓は一目で初が持っている報告書の種類を見抜いた。
彼は手を伸ばして紙の端をつかみ、下向きになっている端を持ち上げて、より多くのデータを見やすくした。
その後、初の手が伸びてきて、中のデータ欄を指さした。「ここの運転資金の額がかなり大きいみたいね。財務状況は問題なさそうで、安定してるわ」
彰啓は少し驚き、顔を向けて初の横顔を見た。
彼からの反応がないせいか、初も好奇心から少し顔を上げ、彰啓の方向に視線を向けた。
彰啓の顔に微かに察知しにくい異色が透けているのを見て、初は思わず眉を寄せ、目を伏せて手元の報告書を確認した。
彼女の視線は彰啓と報告書の間を行き来し、彰啓が何も言わないのを見て、初は自分を疑い始めた。
彼女の言ったことは間違っているのだろうか?
初は眉をひそめ、独り言を言った。「もしかして見間違えた?」
彼女は最初に何枚かの文書を見て、その中から同じ英単語を見つけようとしていた。そうすれば意味をより良く推測できるかもしれないと思ったのだが、今は初はその部分に問題があったのではないかと感じていた。
初が自分の記憶が混乱して、誤って報告書を取り違えたと思い始めたとき、彰啓が突然口を開いた。「見間違えてないよ」
「……」初は少し驚き、顔を上げて、何の表情も見せずに彰啓を一瞥した。