話題は広がらなかったものの、二人の間には何となく暗黙の了解が生まれていた。
朝比奈初が話すなと言えば、彼はおとなしく黙っていた。
しばらく沈黙した後、初は疲れたように欠伸をした。
普段ならこの時間にはもう夢の中だったが、長谷川彰啓のところに来てからは、時差ボケのせいなのか、それとも心が落ち着かないせいなのか。
彰啓が寝なければ、彼女も寝なかった。
今日は少し早く起きて、午後ずっとスキーをして、夜帰ってきてからシャワーを浴びて髪を洗い、荷物をまとめてからずっとここに座って彰啓の残業に付き合っていた。
夜帰ってきたとき、彰啓は浴室を彼女に先に使わせ、自分はパソコンを開いて仕事を始めた。そしてその後、山口秘書がそれらの報告書を持って現れ、彼は忙しくて身動きが取れなくなった。
初は欠伸をした後、顔を上げて彰啓を見て、小さな声で言った。「眠いから、先にベッドに戻るね。あなたも早くシャワー浴びてきて」
——
汐見市
午後、小林由美子と藍川恵は買い物に出かけ、ちょうど篠田佳子もいた。
佳子は義母に呼び出されたのだが、相手が朝比奈初の義母も一緒に誘っていたとは知らなかった。しかし、それはまだ序の口で、その後さらに驚くべきことがあった。
「由美子、この前もらったあのフェイスマスク、どこで買ったの?結構良かったから、買って家に置いておきたいんだけど」
小林由美子は「あれのこと?輸入品だから、ここじゃ買えないわ」と答えた。
「そんな良いルートがあるなら、もっと早く教えてくれればよかったのに」
藍川恵が本当にそのフェイスマスクを使いたがっているのを見て、由美子はついに入手方法を教え、注意点も伝えた。「買いたいなら事前に予約が必要よ。彼らはあなたの肌の状態に合わせて、オーダーメイドで作ってくれるの」
「じゃあ後で予約するわ。番組収録前に手に入るかしら?」彼女はこのフェイスマスクが今まで使ったどれよりも良いと感じ、これを使った後は他のものを使いたくなくなった。
由美子はうなずいて言った。「もちろんよ。今予約すれば2週間以内には届くわ」
おそらく佳子はすぐには反応できなかったのだろう。彼女は二人の年配者がフェイスマスクについて話し、ついでに番組のことに触れるのを聞いて、好奇心から藍川恵に尋ねた。「お母さん、どんな番組を収録するの?」