第140章 彼女が嫁いだ男は頼りになる

彼らが広場ダンスを終えた時には、配信はとっくに終わっていた。

朝比奈初が戻ってくると、斎藤彩の部屋にはまだ明かりがついており、ドアも窓も固く閉ざされていた。

彼女はリビングでしばらく休んだ後、ちょうどお風呂に入ろうとした時、庭の外から誰かがドアをノックする音が聞こえた。そこで初は玄関へと向かった。

撮影はすでに終わっていたので、初はドアをノックしている人が誰なのか分からなかった。

彼女は好奇心から出ていって門の閂を開けると、斎藤央が埃まみれの姿で玄関に立っており、その横には黒いスーツケースが置かれていた。

央はドアを開ける人が彩だと思っていた。顔を上げて何か言おうとした瞬間、初を見て、口に出そうとした言葉を飲み込んだ。

彼は穏やかに微笑んで言った。「朝比奈さん、あなただったんですね?」

初は少し眉を上げて彼に言った。「残念ながら、私がここに住んでるのよ」

彼は時間があるときはいつも配信を見ていたので、初と彩がすでに一緒に住んでいることを知っていた。ただ、最後に彼にドアを開けたのが初だとは思っていなかった。

央はスーツケースを持って入り、好奇心から尋ねた。「姉さんはどこ?」

「部屋にいるわ」初は振り返り、彩の部屋の方向を指さした。

「この二日間私がいない間、姉さんは迷惑をかけたでしょう?」

彩が自分で住む場所を探したという件は、その日のトレンドランキングに一日中載っていた。ネットユーザーは彼女のこの行動が少し過激で、番組スタッフを軽視し、他の出演者も気にしていないと感じていた。

もしあの夜、監督がわざと試合を設定していなかったら、彩はおそらく引き下がる余地がなかっただろう。

初は表面上は笑いながらも心の中では笑わず、彼を見て穏やかに注意した。「私と彼女は同じチームじゃないから、迷惑かどうかは他の人に聞いてね」

結局、彩がどんなに騒いでも初には影響がなかった。二人は同じ番組にいる以外、基本的に接点がなかった。

初はドアを施錠した後、振り返って彼に言った。「あなたのお姉さんの隣にもう一つ空き部屋があるわ」

「わかった」

ドアの外で会話する声が聞こえ、彩は好奇心からドアの側に来て、横向きに外の様子を聞いていた。

彼女は軽く一瞥して、静かに言った。「特に用がなければ、私は部屋に戻るわ」