夕暮れ時、朝比奈初たちは夕日の残光を踏みながら帰路につき、道中で町の自然の美しさを楽しんでいた。
街灯が夜の訪れとともに灯り、湖面には碧い波の微かな光が広がり、家々の影も水面に映し出されていた。
夜風がそよそよと吹き、岸辺の柳の枝が風に揺れて、さらさらと音を立てる中、一行は通りをゆっくりと歩いていた。
「斎藤さんって今夜帰ってくるんですよね?」九十九聴は突然思い出したように、好奇心を持って尋ねた。「じゃあ明日からは自由になれるんですか?」
斎藤彩は前を歩き、彼らとは1メートルほどの距離を保っていた。
聴の言葉は程よい大きさで、ちょうど彩にも聞こえるほどだった。
この一日の出来事で、彼女はすっかり斎藤央が戻ってくることを忘れかけていた。
「自由?」朝比奈初はそれを聞いて、疑問に思って口を開いた。「あなた、もう帰るの?」
聴は突然体を回転させ、後ろ向きに歩きながら、初に言った。「いいえ、残りの二日間も撮影を続けますよ。でも番組スタッフは僕にパートナーを割り当ててないみたいで…」
彼は以前あまりにも気軽に承諾してしまい、央が戻った後、誰とペアを組むのか監督に聞くのを忘れていた。
【かわいそうな九十九くん、番組の使い捨て道具みたいね、使い終わったら捨てられちゃう(笑)】
【大丈夫よ、パートナーのことは監督がきっとちゃんと手配するわ】
【うちの九十九くんは引っ張りだこよ、午後のあのキャンディの売上がすぐに上がったもの。これぞ広告の王子様、スポンサーは絶対に彼を残すことを支持するはず】
【どうしようもなければ朝比奈さんについていけばいいじゃない。こんなかわいい弟を一人ぼっちにしておくなんて誰が忍びないでしょう】
初は突然意味深な笑みを彼に向け、落ち着いた様子で言った。「ちゃんと前を向いて歩かないと、水に落ちても誰も助けてくれないわよ」
彼は初との会話に夢中になっていたため、自信満々な足取りも方向感覚を失い、どんどん横にそれていった。
聴は大いに驚き、急に足を止め、振り返ると、もう少しで土の中に足を踏み入れるところだった。
彼らは番組の道標に従って火鍋のお店に到着し、無料食事券を店員に渡すと、席に案内された。