第142章 一人で3人分の仕事をこなす_3

彼女は少し感情をコントロールできず、手に持っていた鉛筆を無意識に紙に押し付けてしまい、鉛筆の芯が折れてしまった。

斎藤央は鉛筆の芯がテーブルに当たる微かな音を聞き、好奇心から顔を向けると、斎藤彩の鉛筆が折れていることに気づいた。

「僕のを使って」彼は自分の鉛筆を彩の前に置いた。

もし生配信中でなければ、央はおそらく見て見ぬふりをしていただろう。

彩は目を伏せ、手を伸ばした。

しかし彼女は央の鉛筆を完全に無視し、隣にあったハサミを取った。残りの部分はもう描き続ける気がなかったのだ。

央は「……」となった。

【すごく気まずい場面だね、彩のお嬢様気質は全然変わってないね】

【またこの表情とこの顔か、本当に見たくないわ】

【何様のつもりなの、どれだけ偉いと思ってるの、こんなに態度が大きいなんて】

【かわいそうな央くん、帰ってきたばかりなのにまた苦労させられて、この二人がもし姉弟じゃないって暴露されても信じちゃうわ】

——

長谷川の母は朝9時から夕方6時まで会社に出勤していたが、仕事は山積みでも結局彼女の手元には何も回ってこなかった。

彼女は代理取締役として名前だけを掲げ、オフィスに座って書類にサインをし、見せかけだけの仕事をしていた。

暇なときは、母はソファに座ってスマホをいじっていた。

今日は比較的暇そうだった。長谷川彰啓が部下たちに、何でも彼女に相談する必要はないと指示したため、彼女にはほとんど仕事がなかった。

「つまらないわ」何回か連続で大富豪に負けた後、母は興味を失い、もう遊びたくなくなった。

朝比奈初と長谷川一樹が番組を収録していることを思い出し、好奇心から検索してその番組を見ることにした。

バラエティ番組の収録がこれほど長く続いているのに、母が初めて見るのはこれが初めてだった。

母は普段番組を見ることはなく、息子がエンターテイメント業界にいるにもかかわらず、一樹が出演したドラマを見たことは一度もなかった。

彼女は専用のアカウントを登録し、アカウント名やアイコンを変更する時間もなく、すぐに生配信ルームに入った。

「二人が何をしているのか見てみよう…」

次の瞬間、スマホの画面にバラエティ番組の生配信現場が映し出された。