前回の最新メッセージが社員研修の件で止まっているのを見て。
長谷川彰啓は入力画面を開き、しばらく考え込んだ。何度も削除と修正を繰り返したが、一文も完成させることができなかった。
広々としたリビングには、今、物音一つしなかった。
朝比奈初と小林由美子は長い間見つめ合い、二人とも相手が口を開くのを待っているようだった。
しばらくして、ついに由美子が我慢できずに口を開いた。「私の電話がタイミングよくて良かったわ。もう少し遅かったら、あの小僧はもう寝てたかもしれないわね」
「……」さすが実の母親だ。こんな遅い時間でも息子の休息を邪魔することをいとわない。
由美子の怒り気味な様子に、初は口元を引きつらせ、ぎこちない笑みを浮かべた。
ちょうどそのとき、初のポケットの中で携帯が一度振動した。
「誰からかしら?」由美子は近くに座っていたので、さっきの振動も聞こえていた。自分が先ほどかけた電話が効果を発揮したのではないかと期待していた。
由美子が期待に満ちた表情をしているのを見て、初は手を下に伸ばし、ポケットから携帯を取り出した。
「見てみるわ」初は携帯のロックを解除し、すぐに彰啓からのWeChatメッセージを確認した。
由美子は少し焦っていた。彼女は首を伸ばし、初の携帯画面に視線を落とした。ちょうど彰啓のWeChatアイコンが見えたが、赤い通知マークのメッセージは初の手に隠れていた。
「何て言ってるの?」
初はチャット画面を開き、目を落としてメッセージを確認し、落ち着いた様子で読み上げた。「マフラー使ったよ。なかなか良かった、暖かい。ありがとう」
由美子が感情なく読み上げたせいか、それとも言葉が物足りなかったのか、由美子はそれを聞いて目に驚きの色を浮かべ、不思議そうに尋ねた。「それだけ?」
「それだけよ」
由美子は突然近づいてきて、初の携帯を奪い取った。「私がやるわ」
初は「……」と思ったが、由美子はあまり過激なことは言わないだろうと考え、そのままにしておいた。
しばらくして、由美子がメッセージを編集して送信した後、携帯を返してきた。
初は携帯を取り戻し、反射的に会話履歴を確認した。すると、由美子が送ったメッセージは:【それだけ?私が一針一針編んだマフラーなのに、そんな評価と感謝だけ?】
「……」