しばらく細かく観察した後、長谷川権はついにこの玉器が顧客の探していたもう一つの品であることを確認した。
権は興奮して何度も「そうだ」と言いながら、スマホの写真を見て言った。「これだ。こんな宝物が我が長谷川家にあるなんて思いもよらなかった。明日、実家に戻って、母にそれを譲ってもらわないと」
今回の提携相手は引く手あまたで、多くの企業がその契約を狙っていた。長谷川もそのうちの一つだった。
この玉器があれば、長谷川は今回の国際プロジェクトを獲得できる可能性が九割に上がる。
権がこの件に目処がついたと思った矢先、長谷川一樹が突然割り込んできた。「お父さん、あれは兄嫁が七百万円で買って祖母に贈ったものだよ。もし人にあげるつもりなら、祖母は快く承諾しないかもしれないよ」
「何だって?」権の笑顔に驚きの色が混じり、顔を上げて思わず朝比奈初を見た。「あれはあなたが買ったの?」
権の視線を感じ、初は少し戸惑いながら頷いて答えた。「はい。あんな大きな和田玉は珍しいと思って、ついでに買ったんです」
まさかそれが対になっているとは思わなかった。
権が人にあげる考えを持っていると聞いて、長谷川千怜も説得に加わった。「お父さん、あれはとても高価なものよ。たとえ祖母が快く手放したとしても、むやみに人にあげるべきじゃないわ」
「お前たちは視野が狭すぎる。七百万円で二億円のプロジェクトを手に入れられるなら、明らかに我々の得だろう」権はすでに心の中で決めていた。「明日、お前の祖母と相談して、他の方法で彼女に補償しよう」
もともと相手側は長谷川との提携に意欲を示していたが、これに玉器が加われば、今回のプロジェクトは間違いなく獲得できるだろう。
そのとき突然、長谷川彰啓が無造作に口を開いた。「もしこの件がうまくいくなら、父上には私の妻に六パーセントの取り分をお願いしたい」
その言葉が出た瞬間、場の空気が凍りついた。何人もの目が一斉に彰啓に向けられた。
初は箸を握りながら、横目で彰啓の方を見た。まさか彼が父親にこのような要求をするとは思いもよらなかった。彼女に六パーセントをくれと。
彼女は眉をひそめ、疑問に満ちた表情で彼を見つめた。「長谷川彰啓?」
彰啓は箸を伸ばし、冷静に彼女のために排骨を一切れ取り、顔を寄せて小声で言った。「安心して、損はさせないから」
「……」