第201章 この忙しい時期が終わったら

小林由美子は長谷川彰啓と朝比奈初の向かいに座っていた。二人のどんな小さな仕草も、彼女の目には明らかだった。

彰啓は積極的に初に料理を取り分けていて、形だけの結婚とは思えなかった。

ただ、彼女は少し心配していた。この若い二人が結婚したばかりなのに別々の場所に住んでいることを。もしこれが長く続けば、いつか二人の感情が冷めてしまうかもしれない。

もし彼らがもっと一緒に過ごす時間があればいいのに。

長谷川権は突然妻に出張を命じられ、途端に食欲が半減した。

「行かないよ」権は箸を置き、軽く鼻を鳴らした。「俺の手元のプロジェクトはまだ片付いていないのに、なぜ彼の代わりに行かなきゃならないんだ?」

「あなた、息子のためにプロジェクトを一時停止できないの?」

由美子は彼と一緒に帰ってきたので、当然その事情を知っていた。たとえあの玉器が効果を発揮したとしても、短期間で一気に進むことはなく、契約締結から資金調達までにはまだ多くの時間が必要だった。

彼女はこの期間、権が彰啓の代わりに出張できると考えていた。

「彼には手も足もある。自分でやっていけるだろう。お前が心配する必要はない」

初たちは二人の雰囲気がおかしいのを見て、誰も声を出す勇気がなく、年長者の問題に口を挟まなかった。

由美子は不満そうに鼻を鳴らした。「私は初ちゃんに私の二の舞を踏んでほしくないの」

男が出張に行くのは構わないが、外での噂話は止まらず、防ぎようがない。

由美子は当時、実家の力を頼りにしていたので、確かに彼女に失礼な態度を取る人はいなかった。しかし、彼女は背後で彼女を嘲笑う人が少なくないことを知っていた。

今や平凡な出身の初にとって、他人の目には彼女はどう見ても格が足りず、夫が不在なら、捨てられた妻というレッテルが剥がせないかのようだった。

これらの昔話を持ち出されて、権も自分の過ちを理解したようだった。彼の表情は突然柔らかくなり、優しく答えた。「わかった、あさって彼の代わりに行くよ」

しかし彰啓は母親のこの手配に従うつもりはなかった。なぜなら、そちらの仕事はずっと彼が担当していて、彼以上にそのプロジェクトに詳しい人はいなかったからだ。

「お父さん、帰国したばかりなんだから休んでください。僕の仕事は自分で処理できます」