彼女は最近バラエティ番組に出演してネット上で話題になったが、それは全ての人が朝比奈初を知っているということではない。ましてや長谷川彰啓はまだ正式に彼女を公の場に連れ出したことがなかった。
パーティーはまだ始まっておらず、招待客も全員揃っていなかったが、初が会場に到着してからわずか30分で7人の男性と会っていた。彼らは自ら彼女に近づき、親しくなろうとし、最後には皆、連絡先を残していった。
ちょうどこの光景が周囲の目を引いたのか、彼女が一人で隅に座っているのを見て、多くの人が注目していた。
少し離れたところで、ある男性が初の横顔を見つめていた。彼女が次々と現れる男性たちに笑顔で応対するのを見て、興味を持ち、隣にいる友人に尋ねた。「あの女性は誰だ?インフルエンサーか何か?」
「見たことないな」
男性はグラスをゆっくりと揺らしながら、貪欲な視線を向け、つぶやいた。「絶世の美女だな」
「まさか彼女に目をつけたんじゃないだろうな?」隣の男性は彼の考えを読み取ったかのように、初の方向を見た。彼女の手に結婚指輪を見つけると、無理に笑顔を作って言った。「あんな大きな指輪をしているんだ。既婚者かもしれないぞ」
「既婚女性があんな風に見えるか?さっき見たが、何人もの男が彼女に声をかけていたぞ。あの美女も断っていなかった」
最後に彼女に近づいた男性はかなり長く滞在していた。初は興味なさそうな様子で、手にあるプチケーキを無造作に食べながら、隣の男性のおしゃべりを聞き流していた。
初が最後の一口のチーズケーキを食べ終え、その場を離れる口実を探していたとき、突然誰かが前に出て彼女を助け、隣の男性を追い払った。「すみません、ここは私の席なんです」
元々初の隣に座っていた男性は、しぶしぶ立ち去るしかなかった。
背後から声が聞こえ、初が振り返ると、先ほど彼女を助けた男性が派手な花柄のスーツを着ていた。彼女が振り向くと、男性はウインクまでしてきた。
初の目が冷たくなり、口元が微かに引きつった。しかし礼儀正しく、かろうじて笑顔を浮かべて言った。「ありがとう」
「友達になりませんか?」
彼こそが長い間初を観察していた男性だった。先ほどの男が立ち去るのを待って話しかけようと思っていたが、その男が全く去る気配がないことに気づき、自ら近づいて追い払ったのだ。