手首に突然触れる感覚があり、朝比奈初は目を伏せ、自分の手を見た。
長谷川彰啓は力を入れすぎることなく、彼女の細くて柔らかい手首を自然に掴んでいた。二人の体温が伝わり合い、その微かな温もりが彼を静かに目覚めさせていた。
彼女と彰啓の視線は手から離れ、続けて顔を上げ、目が合うと、暗黙の了解で見つめ合った。
「私が片付けておくわ」
「このスカーフ、君にあげるよ」
二人はほぼ同時に口を開き、言葉が落ちた後、その場の雰囲気は妙に言い表せないものになった。自分がまだ彼女の手首を握っていることに気づき、彰啓はゆっくりと手を放した。
手首から手が離れると、初の手はようやく自由を取り戻した。彼女は少し手を動かし、ギフトボックスを手に取り、シャンパンゴールドのスカーフを見下ろした。
彼女は目を上げ、平然と微笑んだ。「私へのプレゼント?」
彰啓は軽く頷き、彼女に言った。「君へのプレゼントだよ。試しに身につけてみる?」
彼はずっとスカーフを初に渡す機会を見つけられずにいた。彼女に先に見られてしまったが、これはこれでいい。彼の心の中で気にかけていたことが解決した。
初は指先でギフトボックスのスカーフを軽く持ち上げたが、すぐに試着しようとはせず、むしろ好奇心いっぱいの表情で彰啓を見た。「私たち、付き合ってるわけじゃないよね?」
彼女の突然の言葉に、彰啓の表情が一瞬止まり、顔色がやや暗くなった。
彼が口を開かないのを見て、初は少し首を傾げ、手のスカーフを掲げて尋ねた。「このプレゼント、ちょっと唐突じゃない?」
彰啓の眉と目には少し不自然さが漂い、目を伏せ、初と視線を合わせる勇気がなく、静かに言った。「贈り物には贈り物を。君がマフラーを編んでくれたから、僕はスカーフをあげるんだ」
「……」そのマフラーの話が出ると、初はそれが実は偶然だったことを彼に言うべきかどうか迷った。
彼女は最初から編み上げたマフラーを誰かにプレゼントするつもりはなかった。
彰啓のハンサムで困惑した顔を見て、初は言いかけては止め、結局「残酷な真実」を彼に告げることなく、彼からのスカーフを素直に受け取った。
彰啓は今、自分のスーツケースを片付けていて、初は隣のキャビネットに背を預け、彼の片付ける様子を見下ろしていた。