夜の色が濃くなり、道路には走る車も歩く人もなく、冷たく静かだった。
街灯が車窓から狭い空間を照らし、薄暗い雰囲気を作り出していた。その光が二人の上に落ち、輪郭もはっきりと浮かび上がらせていた。
さっき、長谷川彰啓が朝比奈初の前で囁いた時、セクシーに突き出た喉仏が一度動き、彼の浅い呼吸が耳に届き、強烈なフェロモンを放っていた。彼の息が彼女の顔にかかり、まつ毛が震えた。
初は彼の墨のような瞳を見つめ、体内に広がる熱を必死に抑えながら、冷静を装って口を開いた。「私が避けたら、あなたの面目が丸つぶれじゃない?」
彰啓は「……」
初は目を伏せ、視線は彼の硬い顎を通り過ぎ、はっきりと一本一本見える睫毛が瞼の上に淡い影を落としているのを見た。最後に彼の微かに上下する胸に視線を落とした。
これは間違いなく心理戦だった。二人はお互いを意図的に試し合っていた。
突然、初は身を乗り出し、二人の鼻先が軽く触れ合い、瞬時に二人の距離はさらに縮まり、心臓が喉元まで上がってきた。
初は夢見るような目で彼を見つめ、唇の端をかすかに上げ、かすれた声で言った。「続ける?」
その言葉が落ちると同時に、彰啓の残っていたわずかな理性は消え去った。
彼は手を上げ、大きな手のひらで初の首の後ろを掴み、躊躇なく彼女にキスをした。
優しさと切なさと熱情が衝突し、浅いキスから深いキスへと変わっていった……
翌朝、空気は潮のように満ちていた。
太陽がゆっくりと昇り始め、遠くから鳥のさえずりが聞こえてきた。
バラエティ番組の収録は通常通り進行中で、放送が始まるとすぐに、視聴者たちが次々とライブ配信に入ってきて、あっという間に賑やかになった。
【うわ!朝早くからこんなに人がいるの?】
【今ちょうど家を出て地下鉄に乗って会社に行くところ。空き時間にちょっとライブを覗きに来たよ。朝比奈姉さんをこっそり見たくて】
【あああああ私も朝比奈姉さんを見に来たの!!昨夜配信が終わっても朝比奈姉さんが戻ってくるのを待てなくて、大げさじゃなく一晩中眠れなかった。今朝特別に来たよ、私の電子ペットがどうなってるか見たくて】
【でも、このホールには誰もいないよね……もしかして私たち来るの早すぎた?】
多くのネットユーザーが無人のライブ配信で次々とコメントを流す中、ついに廊下に人影が現れた。