第344章

朝比奈初から積極的に話を切り出してくれなければ、長谷川彰啓はおそらくこの問題について考えることはなかっただろう。

ちょうど彼も彼女に会うための適切な機会を必要としていたからだ。

初は彼を見続け、表情がゆっくりと真剣になり、口調もやや厳しくなった。「お昼に私が最後に聞いた質問、覚えてる?」

彰啓は目を凝らし、昼間の電話の内容を思い返した。2、3秒経ってから彼はためらいがちに口を開いた。「その時何を考えていたかって...?」

「先に車を止めてもらえる?これから話すことであなたが驚くかもしれないから心配で」

こんな状況で話をするのは確かに無謀だった。

でも今はっきりさせておかないと、今夜が過ぎてしまえば、もう話す必要もなくなるだろう。

彰啓は彼女がそう言った時点ですでに驚き始めていた。

彼は横目で初を見て、眉間に困惑の色を浮かべた。

しばらくして、彰啓は車を路肩に寄せ、適当な場所に停車した。

彰啓はエンジンを切り、初の方を向いてゆっくりと口を開いた。「さあ、話してもいいよ」

初はまずシートベルトを外した。シートベルトの束縛から解放されて、彼女は彰啓の方に正面から向き直ることができた。

彼女は目を上げ、視線は自然と彰啓の目元に焦点を合わせた。「先にあなたの話を聞きたいの。もしバラエティ番組のゲームのことを考えなければ、あの時私があんな風に言ったら...あなたは信じたでしょう?」

彰啓は彼女をじっと見つめ、しばらくしてから口を開いた。「本当に聞きたい?」

「聞きたい」彼女はうなずいた。

「信じるよ」バラエティ番組のゲームを考慮しなければ、これが彼の本当の第一反応だった。

彰啓は少し間を置いて、再び冷静に話し始めた。「でもこのことが真実であろうとなかろうと、実際のところ僕には君を責める資格はないし、怒る理由もない」

「どうして?」自分の耳を疑うかのように、初の瞳孔に一瞬の驚きが走った。

「僕が君と結婚したいと言ったんだし、この期間ずっと出張で君をちゃんと気遣えなかった...もし君が今言ったような状況になったとしたら、まず自分自身を反省すべきだ」

彰啓の感情は常に安定していて、是非善悪もはっきり区別できる。問題が起きれば、まず自分に原因を求める。

この冷静な態度は初にも負けないものだった。