第62章 この女はまだ馬鹿ではない

渡辺修一は言った。「あと半月で試験だよ。夏休みになったら学校がアメリカのフロリダ州に交換留学生として行く夏季キャンプを企画しているんだ」

渡辺健太は言った。「行きたくないなら行かなくていい」このような夏季キャンプ活動は、彼が直接息子をアメリカに送るよりも劣っていた。

修一はさらに興奮した。以前は父親が彼の好みなど気にかけることはなかった。今日の父親の機嫌は本当に良さそうだ!「考えてみるよ。決めたら父さんに言うね」

健太はそれ以上何も言わなかった。

田中純希はスポーツウェア姿で遠くから小走りで後ろについていた。彼女は前を歩く親子の背中、一人は高く一人は低い姿を見て、この光景が本当に素晴らしいと感じた。

彼女は携帯を取り出して数枚写真を撮り、健太が本当に洋服のハンガーのようだと気づいた。どんな服を着ても格好良かった。

修一は振り返って純希を見つけ、「お父さん、純希姉さんが後ろにいるよ」と言った。

健太は振り返って一瞥し、足取りをさらにゆっくりにして、しばらく待ったが彼女が追いついてこないのを見て、思わず振り返って見ると、彼女は別の小道に入り、花房の方へ回り込んでいた!

彼女はいつもこのコースを走っているのに、今日はどうしたのだろう。わざと彼を避けているのか?

健太は胸に不満を抱えていた。

考えれば考えるほど不愉快になり、健太は足取りを速め、朝のジョギングを早く終わらせようとした。

父親のスピードが上がり、修一は最初はついていけたが、すぐに息が上がってきた。彼は本当は父親に待ってほしいとは言いたくなかったが、父親と一緒に朝のジョギングをしたかったので、「お父さん、僕はそんなに速く走れないよ」と懇願した。

健太は息子がまだ横にいることをほとんど忘れていた。彼は自分の腰にも届かない修一を見下ろし、足取りを再び遅くした。「前の角を曲がって戻ろう。今日は会社に早く行かなければならない」

「わかった」修一は息を切らして走っていたが、父親が待ってくれることに嬉しかった!

健太の心の中では何を感じているのかわからなかった。修一の顔は8割方彼に似て、2割は前妻の山崎悦子に似ていた。

彼女は難産で亡くなった。これは運命のいたずらだった。彼女が亡くなる日まで、彼は彼女に良い顔一つ見せなかった。