この日、田中純希は病室でテレビで渡辺修一の学校での発表会を見ていたが、実際には何も頭に入っていなかった。渡辺健太が病院を去ってから数日が経ち、彼は本当に戻ってこなかった。
画面の向こうは大いに盛り上がり、照明が舞台から客席へと照らし出された。カメラが最前列の来賓席に止まったとき、純希のぼんやりとした視線が一気に集中した。健太?彼は来ないと言っていたはずでは?
純希は間違えていなかった。本当に彼だった。彼は濃紺のスーツを着て最前列の中央に座り、目の前のプレートには彼の名前が書かれていた。司会者が渡辺氏グループの社長を盛大に紹介すると、彼は立ち上がって観客に挨拶した。
イケメンはどこでも人気だが、ましてやゴールデンバチェラーのイケメンとなれば尚更だ。
渡辺社長の凛々しい顔が画面に映し出されると、観客席の雰囲気は完全に沸騰し、まるで大スターのファンミーティングのような光景となった。
この人は確かに群を抜いている。彼は最も高い場所に立ち、人々の羨望や崇拝や畏敬の眼差しを受けるべく生まれてきたのだ。
それなのに彼女は数日前まで、彼が自分を誤解しているのではないかと悩んでいた。なんて滑稽なことだろう。
彼女のことなど彼の目には何の価値もないのだ。本当に思い上がっていた。
健太が再び着席すると、彼女は彼の隣に中島陽太がいることに気づいた。彼はいつ戻ってきたのだろう?純希はさらに陽太の隣に若い男性が座っていることにも気づいた。温厚で上品そうな男性で、時々彼らと言葉を交わしていた。彼の前の名札には「藤田宗也」と書かれていた。
純希は修一の口からこの名前を聞いたことがあった。
彼らみんなが修一の発表会を見に行っている。素晴らしいことだ。修一はきっととても喜んでいるだろう。
発表会の録画全体を通して健太のショットが多く映し出され、純希が彼に気づかないわけにはいかなかった。彼女はしばらく見入ってしまい、佐々木静が入ってきたことにも気づかなかった。
静は横に立って少し見ていたが、皮肉っぽく言った。「渡辺さんはもう来ないわね。テレビで見るのもいいでしょう?でも忘れないで、彼は私の彼氏よ」
純希はようやく彼女に気づいた。怒りはしなかったが、静の言葉を何度も考えるうちに、ますます動揺した。自分は番組を見ていると思っていたが、実は健太ばかり見ていたのだろうか?