第222章 久しぶり

佐藤妙は少し困った様子で言った。「万凌エンタメは特殊なんです。人事部が最初の選考を通過した後でも、山田民夫マネージャーが直接誰を採用するか決めるんです。それに、数日前に新しい社員が入社したばかりで、今は空きがないんです」

田中純希は黙り込んだ。万凌エンタメに入れなければ、どうやって松本智に近づけばいいのだろう?

佐藤妙は純希の様子を見て、こう言い足した。「じゃあ、山田マネージャーに相談してみましょうか。きっと承諾してくれると思います」

彼女は山田が自分に気があることを感じていた。山田は何度も食事に誘ってきたが、彼女はいつも断っていた。純希のためなら、彼に会うしかないだろう。

山田雪は二人に重要なポイントから外れないよう注意した。「純希、あなたが戻ってきたのは渡辺健太を探すためでしょう?彼を見つければ、すべてうまくいくわよ」

田中純希はそれで思い出した。渡辺厚志がもういないなら、堂々と延城に現れることができるし、安心して彼に会うこともできる。

でも…彼女は落胆して言った。「彼が結婚するって聞いたわ」

佐藤妙は気にしないように言った。「上田玲奈とは何度か接触したことがあるけど、彼女は何も分からないお嬢様で、気性も荒いわ。社長が彼女を好きになるはずがないわ。自分に自信を持って。この2年間、社長は仕事以外何もしていなかったし、周りに他の女性は現れなかったわ。本当よ」

田中純希は少し心が慰められた気がした。彼女は尋ねた。「松本家について知ってる?」

佐藤妙は松本家については知っていた。純希がなぜこんなことを聞くのか分からなかったが、大まかな状況を説明した。

松本家は国内最大の電気製品輸出商で、自社の海運路線を持ち、多くの国に私設の埠頭を持っている…純希はカップを握りしめた。こう聞くと、松本家の松本冠太は渡辺厚志が言っていた「ビジネスパートナー」とかなり一致する点が多い。

彼女は自分の推測が正しいという確信を強めていった。

松本家は渡辺家と比べるとまだまだ劣る。松本冠太がどうして渡辺健太に手を出す勇気があったのだろう?

事態はますます複雑になっていた。まずは健太を見つけて、きちんと話し合わなければならない。

食事を終えた後、純希は新しい携帯電話を買ってから御華府に戻った。