上田悠真は言った。「田中純希、君は今ヘッドハンティング会社に目をつけられているそうだね」
純希は恐縮した様子で「上田マネージャーは冗談を言っていらっしゃいますね。私は以前エンターテイメント会社に入ったことがなく、今も手探り状態です。上田嬢様が私に学ぶ機会を与えてくださったことに感謝しています」
悠真のハンサムな顔に意味深な表情が浮かんだ。話し方も上手い、本当に貴重な人材だ。
彼は言った。「ちょうど私も万凌に行くところだ。一緒に行こう」
彼が出て行くと、純希はまだその意味を考えていた。キティが彼女の肩を押して注意した。「マネージャーが一緒に行こうと言ったのは、彼の車に乗って行けということよ」
純希は少し不安になり、尋ねた。「マネージャーはどんな人?」
彼女はこれまで上田玲奈に注目していたため、悠真についてはあまり知らなかった。おそらく女好きで、元カノが数え切れないほどいることは知っていた。そのような男性は敬遠したいタイプだった。
キティは純希の心配を察して言った。「マネージャーは外では女好きですが、自社のタレントには手を出さないわよ」
純希はそんな話を信じるわけがなかった。彼女は少し躊躇したが、結局悠真の後を追った。
会社の新人として、初日からマネージャーの機嫌を損ねるわけにはいかなかった。
渡辺氏タワー。
上田玲奈は社長室の外で待ちくたびれていた。「なぜ社長はまだ私に会わないの?彼と中村佳子に何の話があるっていうの!」
真川秘書はこのお嬢様をなだめて言った。「社長はいつも通りイベントに参加するタレントに会っているだけです。中村さんはすぐに出てくるでしょう」
社長は普段エンターテイメント会社の事には関わらないが、イベントの開催日が近づいているので、タレントに会うのは当然のことだった。
玲奈は腕を組み、ハイヒールで床を不満げに叩きながら言った。「私はもうずっと待っているのよ!」
真川秘書は彼女にどう対応していいか分からず、もし社長が本当にこの上田玲奈と結婚したら、渡辺氏で無事に定年退職できるかどうか分からないと思った。
田中純希と上田悠真が万凌エンタメに現れると、山田民夫は驚きのあまり顎が外れそうになった。