第230章 目の付け所が良い

藤田宗也はベッドに身を投げ出し、佐藤妙が山田民夫と食事をしている光景が頭から離れなかった。

彼女は向かいの男性を見つめ、笑顔を浮かべながら、話し尽くせないほどの話題があるようだった。

彼女はいつ彼をそんな風に見つめたことがあっただろうか?アパートで会っても、急いで立ち去るだけで、まして彼と長話をすることなどなかった。

民夫との食事のために、部署の飲み会だと嘘までついたのだ。

宗也は妙が他の男性のために自分に嘘をつく日が来るとは思ってもみなかった。これが現実だとは到底受け入れられなかった。

この2年間、彼は忙しすぎて、彼女の時間をすべてアパートに留めておけば、彼女は2年間待ってくれると思っていた。

この女性は一体何を考えているのか。彼はここまでしているのに、彼女は本当に少しも分からないのだろうか?

宗也は携帯を手に取り、その番号をダイヤルしたが、つながる前に切ってしまった。

なぜ彼女に電話をしなければならないのか。間違ったことをしたのは彼女なのに、なぜ彼女から電話をかけて、いくつか優しい言葉をかけてこないのだろう。

宗也は携帯を投げ捨て、一晩中鳴ることはなかった。

伊東柔がドアをノックして呼びかけた。「千裕、スープを飲んでから寝ない?」

宗也は布団をかぶったまま、「食欲ないよ、呼ばないで」と言った。

柔は完全に困惑した。息子は幼い頃から今まで、彼女にこんなにイライラした態度を見せたことはなかった。

彼女は書斎に行き、夫に尋ねた。「千裕は恋愛でもしているのかしら、今日はとても変だわ」

藤田優斗は不機嫌そうに言った。「あいつが恋愛?それなら先祖に線香を何本も上げないとな」

夫婦は数年前まで孫を抱く日を楽しみにしていたが、今ではもう想像すらできなくなっていた。この息子は恋愛に鈍感すぎるのだ!

柔も仕事中毒の息子が恋愛をしているとは信じられなかったが、どう考えても様子がおかしい。「だめだわ、時間を見つけて彼のアパートを見に行かなきゃ」

田中純希は上田歴エンタメに出社し、上田玲奈は会社にいなかったが、彼女のマネージャーが直接彼女を迎えた。

純希は玲奈に雇われたため、人事部は急いで彼女の入社手続きを行い、マネージャーは彼女に会社を案内し、デスクを用意した。