第295章 きっぱり別れる

木下智樹は彼らの関係に何か変化が起きることを恐れ、帰国の翌日に両家の両親を集めて食事会を設けた。

山田雪はこれに特に異論はなかった。彼女はすでに彼のプロポーズを受け入れており、早かれ遅かれ両親に会うことになるのは同じだった。

山田さんのお父さんとお母さんは特に喜んでいた。「この二人はやっぱり最終的に一緒になったのね、本当に良かった」

木下さんと奥さんも笑顔で喜んでいた。「どうやら私たちの二家は本当に縁があるようですね。どの日取りがいいでしょうか？」

雪は年長者たちに言った。「私たちはまず婚約したいと思います」

智樹は彼女に無理強いしたくなかった。結局、二人の決断はあまりにも急だったし、彼女に後悔を残したくなかった。

彼は助け舟を出した。「僕たちは恋愛を始めたばかりだから、まず婚約して、結婚は急がなくていいと思います」人を婚約で確保できれば彼も少し安心感を得られる。

両家の年長者たちは皆理解のある人たちで、若いカップルの意見が一致しているのを見て、彼らも干渉しなかった。「それもいいでしょう、もっと長く付き合うのも良いことです」

雪は母親の顔に浮かぶ笑顔を見て、心の中で自分に言い聞かせた。このままでいいのだ、もう過去のことは考えないようにしよう。

田中純希は先輩が木下智樹と婚約したというニュースを聞いて、心から先輩を祝福した。「智樹さんはあなたを幸せにしてくれるわ」智樹は責任感があり家庭観念もあり、中島陽太とはまったく違う。彼は先輩に安心感を与えることができる。

雪は特に嬉しそうな様子はなかった。「純希、ありがとう」

純希は先輩のやや落ち込んだ声を聞いて、心が重くなった。先輩はまだ陽太のことを忘れられていないのだろう。

彼らは3年近く一緒にいたのだ。忘れようと思っても簡単に忘れられるものではない。

雪は別荘の鍵を佐藤妙に渡した。「妙、私はお手伝いさんに彼の荷物を全部まとめて彼の家に送らせたから、あなたが彼のために受け取ってくれない？」

妙は雪が陽太と別れて木下智樹と婚約したことを知っていた。彼女はこの爆弾のようなニュースに半分呆然としていた。つまり、陽太はこうして振られたということ？

彼はアメリカで雪が婚約したというニュースを知っているのだろうか。どうして一本も電話をかけてこないのだろう。