第315章 間違えました、旦那様

田中純希は松本智への懲戒が始まると聞いて、顔を輝かせた。「山田マネージャーは何か計画があるんですか?教えていただけますか?」

山田民夫は本当に言いづらかった。「渡辺奥さんも興味がおありなんですか?」

純希は指で机を叩きながら、少し不気味な笑みを浮かべた。「私にやらせてもらえませんか?私が直接手を下します」

民夫は鳥肌が立った。「社長に申請しないと」

「必要ありません。私が申請します」

純希は直接渡辺健太に電話をかけ、自分の意向を伝えた。

健太は妻の機嫌が良さそうなのを見て、もちろん反対するはずもなく、民夫に指示した。「奥さんに全面的に協力して、言われた通りにしなさい」

民夫は松本智のことを残念に思った。明日のスターになれたはずなのに、一歩間違えただけで全てを失うことになる。

彼は心中苦しかった。会社が爆発的に人気の新人を育てるのはどれだけ大変なことか。智がダメになれば、また新しい人材を育てなければならない。結局、年末の業績評価では渡辺社長はデータしか見ず、どんな言い訳も受け付けないのだから。

純希は数日間連続で万凌エンタメに陣取り、会社中が渡辺奥さんの意図を知らなかったが、中村佳子と松本智だけは青くなっていた。

民夫は奥様の好きにさせておいた。どうせ社長が守ってくれるし、間違いがあっても片目をつぶるしかない。彼にはそこまで手が回らなかった。

彼は有望な新人を探すのに忙しく、佐藤妙が時々下りてきて新人の入社計画について話し合っていた。民夫はいつも妙を見つめてぼうっとしていた。

佐藤主任の気品と美しさなら、彼女がこの業界に足を踏み入れる気があれば、半年もかからずにスターにできる自信があった。

純希は民夫の小さな動きに気づき、妙が5階を離れた後、エンターテイメント雑誌を丸めて「パン!」と民夫の頭を叩いた。「山田エロ親父、何考えてるの?」

民夫は窦娥よりも冤罪だった。「渡辺奥さん、私は何も考えてませんよ!」

純希は彼の向かいに座った。「見透かされてると思わないでよ。言っておくけど、彼女はもう藤田奥様なのよ。現実離れした妄想は持たないでね」

民夫は胸を痛そうに押さえた。「もう言わないでください、心が砕けます」