第353章 一度の生配信キスを捧げる

田中純希はハイヒールに履き替え、ホールから出てきた時、渡辺健太は目を離すことができなかった。

スタイリストは社長の反応を見て、社長が奥様の装いにとても満足していることを悟った。奥様はスタイルが良く、どんなデザインも似合い、今日会場に来ているジュエリーモデルにも引けを取らなかった。

純希は以前、いつも同じ数着の服を着回していたが、結婚後はクローゼットを義理の叔母に任せ、ほとんど同じ服を着ることがなくなった。新しい服に着替えて健太の前に立つたびに緊張していた。

今もそうだった。夫の視線に含まれる熱情があまりにも露骨だったせいか、純希はまた緊張して「似合う?」と尋ねた。

「とても似合うよ」

純希は微笑んだ。「あなたもかっこいいわ」

スタイリストはお世辞を言った。「社長と奥様は本当に天が結んだ仲、才色兼備のお二人ですね」

部下に対していつも冷たい健太が珍しく笑顔を見せた。「なかなかやるな」

スタイリストは恐縮した様子だった。

純希は健太に手を引かれて階下へ向かった。階下には多くの幹部が待っており、真川秘書はすでにリゾートホテルでゲストの対応をしていた。

ここにいる多くの人々を純希は見たことがなかったが、彼らは何度も会ったことがあるかのように、紹介なしで社長と奥様に挨拶をした。

純希は健太の腕にしがみつき、頷きながら微笑んでいた。車に乗ろうとした時、石井つぼみも降りてきた。

つぼみは純希の服装を見て、一瞬顔が強張ったが、笑顔を作って近づいてきた。「純希、いつ来たの?あなたが来るなんて知らなかったわ、本当に驚いたわ」

純希はつぼみが自分と同じ色系統の服を着ていることに気づき、最初は「まずい」と思った。二人が似たような服装で、しかもテープカットの主要人物として一緒にメディアのカメラの前に立てば、メディアは必ず二人を比較するだろう。

しかしその考えはすぐに消え、純希はリラックスした。同じ服を着ていたとしても、つぼみに負けるとは思わなかった。今は単に色が似ているだけ、何を恐れることがあるだろう?

誰が恥ずかしい思いをするかは明らかだった。

純希は背筋を伸ばし、つぼみよりも甘く微笑んだ。「昨日着いたの。昨晩はぐっすり眠れて、今日はちょうどテープカットに間に合ったわ。本当にラッキーだったわ」