第357章 サプライズ

渡辺健太は13階の展示ホールに上がった。ホールのランウェイ、観客席、音響、照明などはすべて調整と点検の段階に入っており、石井つぼみは会社のチームを率いてホールでリハーサルを行っていた。今夜、彼女もショーに参加し、最も価値のある宝石を身につけて、世界各地から集まったゲストに披露する予定だった。

つぼみはこのイベントに自信満々で、彼女は全ての人に自分の魅力を見せつけるつもりだった。

デザイナーとモデルの二重の身分は確実に彼女に加点となり、今夜のライトとステージは間違いなく彼女のものであり、誰も奪うことはできないだろう。

つぼみは健太が来たのを見て、手元の仕事を置いた。「健二、満足してる?」

「君が手配してくれれば大丈夫だよ」

つぼみは彼の機嫌がまだ良さそうなのを見て言った。「下の広場では野外ダンスパーティーの準備をしているわ。私は事前に野外ダンスパーティーがあるとは聞いていなかったから、パートナーを誘っていないの」

彼女は表面上は事実を述べているだけだったが、実際には彼に尋ねていた。なぜ彼は彼女にこのことを知らせなかったのか。

今や彼らは協力関係にあるのに、ダンスパーティーのことさえ彼女に隠す必要があるのだろうか?

健太は重要なことを避けて軽く言った。「ダンスパーティーは自由参加だよ。現場にはたくさんのゲストがいるから、どうしてもパートナーが見つからなければ参加しなくてもいい」

一言でつぼみの面目を潰した。彼女の条件で、どうしてパートナーが見つからないことがあるだろうか?

つぼみは一時的に言葉に詰まり、健太はつぼみの表情を気にせず、エレベーターで最上階の豪華スイートに向かった。エレベーターのドアが開くとすぐに、子供たちの遊ぶ声が聞こえた。

渡辺愛希はホールを走り回っていた。「お兄ちゃんは私を捕まえられないよ!」

渡辺修一は協力して小走りで後ろを追いかけていた。「妹ちゃんが速すぎるよ、本当に捕まえられないよ!」

愛希はおばあちゃんの腕の中に走り込んだ。「おばあちゃん、抱っこ」

田中母さんは彼女の小さな心臓を抱き上げた。「汗をかいたわね、もう遊ばないで、少し休んでからまた遊びましょう」

小林筠彦は小さなタオルで孫娘の汗を拭き、姻戚同士で育児の話題について話すことは少なくなかった。