第362章 渡辺社長はとても不安

みんなが渡辺奥さんの姿を探していると、メディアの目ざとさで田中純希が会場の外側に立っているのを見つけ、すぐに取り囲んだ。

真川秘書が傍らで遮っていたため、メディアは数メートル離れた場所から写真を撮るしかなかった。多くの人が心の中で疑問に思っていた。渡辺奥さんは名門の出身ではないのに、一体どこが渡辺社長を夢中にさせているのだろうか?

純希は会場の焦点となり、少し戸惑っていた。

渡辺健太は彼女にこの城を贈ると言ったが、彼女はそれを冗談だと思って真に受けていなかった。彼は本気だったのだ。

彼女はそれがどれほど巨額な数字なのか想像もできなかった。健太は……

純希は目に涙を浮かべた。以前、彼がこのプロジェクトのためにサンクトペテルブルクに出張したとき、彼女は彼が石井つぼみと一緒に出張することに何か別の理由があるのではないかと疑っていた。

純希は深く感じていた。彼女はこんな重い贈り物に値しない、彼女は適格な良妻賢母ではないと。

司会者は経験豊富だったが、渡辺社長の言葉に驚いて言葉を忘れてしまった。ディレクターが舞台下から彼に促し、ようやく思い出して尋ねた。「つまり、これは渡辺社長が個人的に奥様に贈られたプレゼントということですね。新婚のプレゼントでしょうか?」

健太は言った。「妻へのプロポーズのプレゼントです。私は彼女にプロポーズの儀式を借りていました。彼女に私たちの愛に何の後悔もしてほしくないのです。」

司会者は興奮のあまり声が変わった。「渡辺社長は公の場で奥様にプロポーズされるのですか?」

健太は純希の方向を見つめ、目に溢れる愛情を込めて言った。「そうです。彼女に皆の前で私に答えてほしいのです。これからどんなことが起きても、決して私のそばを離れないと。もしこの儀式がなく、皆さんの証言がなければ、私はとても不安なのです。」

みんな自分の聴覚に問題があるのではないかと思った。渡辺社長が不安を感じるなんて?

真の愛でなければ、こんな言葉は出てこないだろう!

渡辺奥さんは前世で地球を救ったに違いない。今世でこんなに一途で情熱的でハンサムで裕福な夫に出会えるなんて!

司会者は渡辺奥さんをステージに招待し、音楽がタイミングよく流れ始めた。空高くからバラの花びらが舞い落ち、空気中に花の香りが漂った。