第29章 ご主人様!緊急事態!

「やあ、須藤お嬢さん、なんという偶然でしょう」

須藤夏子はちょうどこの学校の責任者をどうやって見つけようかと考えていたところ、宮平一郎が息を切らしながら向こうから「歩いて」くるのが見えた。

西園寺真司の部下に対して、彼女は嫌いでもなければ親しくもなれなかったので、ただ淡々と挨拶を返しただけで、彼がなぜここにいるのかを考えることもなく、ましてや尋ねることもなかった。

これが逆に一郎を困らせることになり、彼は自ら話しかけ始めた。

「須藤お嬢さん、どうしてここに?」

夏子は特に隠すこともなく、自然に答えた。「ここで仕事の機会がないか見てみようと思って。あなたの若様にあれだけの大金を借りているんだから、返すためにお金を稼がないと」

一郎は夏子の恨めしげな口調に言葉に詰まったが、若様が知りたがっていたことを簡単に聞き出すことができた。

仕事を探しているのか、それはよかった!

ここは若様の縄張りだ。須藤お嬢さんがここで働けば、もう誰にもいじめられることはないだろう!

「そういえば、あなたもどうしてここに?」夏子は誰かと話すのも悪くないと感じていた。それに一郎も去る様子はなく、ずっと彼女についてきていた。

「私ですか...実は、若様の妹がここに入学することになって、前もって環境を確認しに来たんです」

夏子は急に頭が回り始めた。セイント&ヨークは二種類の学生しか受け入れていない。西園寺の妹はおそらくお金で裏口入学するタイプだろう?ということは、彼らはこの学校に人脈があるということか?

一郎は夏子の「不穏な」視線に背筋が凍る思いをし、思わず一歩後ずさりした。

すると、夏子は笑顔を見せた。

「宮平様、あなたはこの学校の責任者と親しいのですか?」

この敬称に一郎はさらに恐れをなして後ろに体を傾け、どもりながら答えた。「親、親しい...でしょうね」

「本当ですか!それは良かった。この学校の責任者に話してもらえませんか?私に面接の機会をください。安心してください、あまり大きな便宜を図ってもらうつもりはありません。ただチャンスが欲しいだけです。最終的に採用されるかどうかは私の実力次第ですし、早くあなたたちにお金を返したいだけなんです。お願いします、助けてください」