須藤夏子がお風呂から出てきた時、ルームサービスはちょうど「蚊を退治し終えた」ところだった。
西園寺真司は彼女が出てくるのを見ると、先に寝るよう促し、自分も浴衣を持ってバスルームに入った。
夏子はこの時、眠れなくなってしまい、眠るふりをするしかなかった。
十数分後、彼女は微かな足音を聞き、そしてベッドのもう半分が沈み込み、彼女のものではないボディソープの香りが鼻をくすぐった。
夏子はもう演技を続けられず、体全体が硬直してしまった。
すると真司が片手で彼女を抱き寄せ、まるで彼女が眠りを装っていることを知っているかのように言った。「慣れないとね」
そう言うと、彼は先に目を閉じた。
夏子は彼の清潔で端正な寝顔と、常に微かに浮かんでいる口元の笑みを見て、突然恐れが消えた。
そうだ……
慣れればいいんだ。
母親の厳しさと父親の偽善にも慣れてきたのに、なぜ誰かに優しくされることに慣れられないのだろう?
そう思うと、夏子は少し体を動かした。真司の腕は緩んでまた締まり、後ろからしっかりと彼女を抱きしめた。背中から伝わる安心感のある力に、彼女も思わず口元を少し上げた。
一夜の良い夢。
翌朝早く、ホテルの高層階の朝は特別に静かで爽やかだった。
夏子はぼんやりと伸びをした後、昨夜自分と真司が二人きりで一晩を過ごしたことを思い出し、眠気が一気に飛んだ。
彼女の手はためらいながら、背中越しにそっと後ろに伸ばし、隣にまだ温もりがあるかを確かめようとした。
しかし、この小さな動きは、すでに起きてベッドの脇で見ていた真司にばっちり見られていた。
「僕は7時に起きる習慣があるんだ。今は9時だよ」
突然の声に、夏子は慌てて起き上がり、恥ずかしさのあまり手の置き場に困ってしまった。
真司は明らかに運動を終えたばかりで、服は汗で濡れていた。
「あの……私も普段は寝坊しないんです。昨日は疲れていたのかも」夏子は少し気まずそうに説明した。
実際、彼女は昨夜とても心地よく眠れたのだ。帰国してからというもの、彼女はほとんどぐっすり眠れたことがなかったが、昨夜は不思議と安心して満足のいく眠りにつけた。
真司は笑いながら彼女を一瞥し、「先にシャワーを浴びてくる」と言った。
夏子は急いで頷き、真司がバスルームに入るとすぐにベッドから飛び起きて服を着替えた。