第58章 どう言っても彼が正しい

車は最終的に東京の郊外で停まった。須藤夏子は目の前の何もない更地を見て、少し混乱した。

家を見に行くって言ったのに、ここには荒れ地しかないじゃない。どこに家があるの?

「この場所はどう思う?」西園寺真司は辺りを見回した後、少し不満そうに夏子の意見を尋ねた。

「場所は普通かな。問題は私の職場から少し遠いことと、家が見当たらないことね」まさか彼はテントを張って暮らすつもり?

「じゃあ、次の場所に行こう」妻が気に入らないと分かると、真司はすぐにこの土地を却下した。

そして次に、彼らは続けて何カ所もの場所を訪れたが、例外なくすべて空き地だった。夏子はようやく真司の意図を理解した。彼は新しく土地を買って家を建てるつもりだったのだ。

「既存の家を買った方が簡単じゃない?なぜわざわざ新しく建てるの?」夏子は不思議に思った。真司の様子を見ると、東京に一生住むつもりではなさそうだし、彼女自身は身を寄せる場所さえあれば満足なのに、なぜそこまで手間をかけるのだろう。

真司は再び彼女の頭を撫でながら、真剣な表情で言った。「東京は遅れているんだ。私が気に入る家がない。君は私と一緒に生活の質を上げるべきであって、私が君に合わせて生活の質を下げるべきではない」

夏子:「……」

どう言っても彼が正しいということになる。

「君はどの土地が一番いいと思う?」真司はいくつか気に入った場所があったので、直接夏子に選ばせることにした。

夏子は周りを見回して言った。「ここが一番いいと思う。都心にあるけど、喧騒の中の静けさがある」

「でも、ここは君の職場からちょっと遠いようだね」真司も実はこの地域を気に入っていた。東京のS&Yモールに近く、彼が会社に行くのにも便利だった。

「ここは地下鉄で直通だし、そんなに遠くないわ。最大でも40分で着くわ」

真司は目を閉じて深く息を吸い込んだ。「西園寺真司の妻が地下鉄で通勤?」

夏子:「……」

そうか、また彼女は間違ったことを言ってしまった。

「君がここを気に入ったなら、ここにしよう。最大でも3ヶ月で住めるようになる。そうしたら、結婚式を挙げよう」

結婚式!

「結婚式?東京で?」

真司は彼女の驚いた様子を見て、眉を上げて尋ねた。「何か意見があれば言ってくれていい」

夏子は唇を噛んだ。