第62章 結婚指輪(3)

小さくて繊細な指輪が、薬指にぴったりとはまった。

きらきらと白く輝くダイヤモンドが須藤夏子の手を玉のように細く見せ、まるでこの手のために生まれてきたかのようだった。夏子自身も思わずもう一度心を奪われてしまった。

「お嬢様、このデザインがお気に入りですか?お目が高いですね。この指輪は当店の看板商品で、東京支店にはこの一組しか残っていないんですよ。」店員も驚いていた。確かにこれは店内最後の一組で、女性用のサイズが小さすぎるため、ずっと売れ残っていたのだ。欲しいという人は少なくなかったが、みな指にはまらないことを理由に諦めていった。

夏子はその言葉を聞いて一瞬躊躇し、西園寺真司に電話してもらおうかと考えたが、店員がひっくり返した価格表を見た途端、無理やり視線を引き離した。

一組で三百万円以上!

真司がとても裕福だということは知っていても、厚かましくもこんな高価なものを彼に求めるわけにはいかなかった。そこで彼女は言った。「少し大きいわ、合わないわね。」

深井杏奈と石川お母さんは素早く視線を交わし、そして杏奈が突然夏子の手を掴んで、驚いたふりをして言った。「大きくないわよ、ぴったりじゃない。気に入ったなら買えばいいのに、そんなにお金かからないわよ。夏子、まさかお金を持ってないの?」

夏子の目に一瞬暗い影が過ぎった。杏奈が罠を仕掛けていることは分かっていたが、どうすることもできず、最後には言うしかなかった。「気に入らないから合わないのよ。」

杏奈は意味ありげに夏子を一瞥し、今度は指輪を自分の指にはめてみた。明らかに少し小さかったが、彼女は笑いながら言った。「私にもぴったりよ。あなたが本当に気に入らないなら、私が買うわ。予備として持っておくの。ほら、結婚式では何が起こるか分からないでしょ。」

「気に入ったなら自分のものにすればいいわ。」夏子は心の中で急に不快感を覚えたが、杏奈の罠にはまるつもりはなかった!

杏奈は夏子が我慢するしかない様子を見て、心の中で極度の快感を覚えた。一方で夏子を見ながら、もう一方で店員に大声で言った。「この指輪のセットを包んでください。」

小泉庭花もすぐにネックレスと指輪のセットを指差し、わざと大声で言った。「これらも一緒に包んでください。夏子、何か気に入ったものはある?お金がないなら、私たちが一緒に払ってあげるわよ。」