第83章 相続権と須藤夏子、あなたはどちらか一つしか選べない!

「これはどういう意味だ?」

石川城太は目の前に置かれた書類を見つめ、目には疑惑の色が浮かんでいた。

昨夜、深夜近くに突然西園寺真司から電話があり、今日の午後にオースホテルで会う約束をした。西園寺が東京に来てからもうしばらく経つが、二人は時々顔を合わせても基本的に無視し合っていた。西園寺から積極的に連絡してくるなんてなおさらだった。

しかし城太は何となく感じていた。西園寺が彼に会いたがる理由は、おそらく須藤夏子に関係しているのだろうと。

先日、彼は一時の感情に任せて夏子に手を出してしまった。結局何も起こらなかったとはいえ、西園寺がそう簡単に許すタイプではないことは明らかだった。特に夏子は今や西園寺の女なのだから!

「俺の意図は、見れば分かるだろう」西園寺は直接的に用件を言わなかった。石川とくだらない話をする気が全くなかったからだ。彼が言いたいことはすべて協議書の中にあった。

城太の視線は書類と西園寺の間を行ったり来たりし、もともと冷静だった目つきがさらに陰鬱で測り難いものになっていった。

西園寺は彼が動かないのを見て、宮平一郎に目配せした。

一郎はテーブルに近づき、城太のために書類をめくり、協議書をきちんと彼の前に置き、ペンも一本添えた。

城太の目は協議書をざっと見ただけで、すぐに釘付けになった!

「相続権放棄協議書?西園寺、一体何がしたいんだ!」城太のもともと冷静だった態度は、目立つ協議書のタイトルに一瞬で崩れ去った。そして西園寺の返答を待たずに、協議書の条項を注意深く読み始めた。

しかし読めば読むほど、彼の眉はより一層寄せられ、表情もますます暗くなっていった!

「本当に石川テックの相続権を放棄するつもりか?ただ俺が夏子に関わらないようにするためだけに?」

西園寺は彼の質問が終わるのを待ってから、片方の口角を上げ、皮肉な目で城太を見て言った。「関わらないだけじゃない。俺の妻の世界から完全に消えろということだ!」

城太は西園寺を見つめ、信じられないという表情を浮かべていたが、徐々に彼の顔の驚きは冷笑に変わり、目を細めて何かを考えているようだった。