パシホテルから学校までの道のりには三つの病院があり、陸橋天音はいつもの癖で迷わず一番大きな病院を選んだ。
須藤夏子と天音は二人とも朝寝坊して朝食を食べていなかったので、ちょうど病院の隣にはたくさんのレストランがあり、二人は病院から一番近い麺屋を選んで、窓際の席に座った。そこからは病院の入り口の人や車の往来がはっきりと見えた。
「お姉ちゃん、昨日のこと……お兄さんのこと怒ってない?」天音は麺をちょっと食べて、少し遠慮がちに尋ねた。
昨日の西園寺真司と石川城太の間の「取引」は、彼女も本当に驚いた。彼女は真司が石川テックを引き継ぎたくないことをずっと知っていた。彼はただ自分が欲しくないものを使って、自分に有利な取引をしただけだった。
夏子は麺を食べる動作を止めず、無関心そうに言った。「なんで彼に怒るの?むしろ感謝してもしきれないわ。彼のおかげで多くのことが見えてきたから」
天音は彼女のこの様子を見て安心し、さらに探るように尋ねた。「じゃあ、これからはもうあの石川城太のことで悲しんだりしないの?」
「うん」夏子はまた何の気なしに返事をした。まるで城太が彼女にとって見知らぬ人であるかのように。
天音は彼女の表情が演技ではないと見て、すぐに嬉しそうに笑った。食事に集中しようとした時、彼女の視線が突然窓の外で止まった。きれいな大きな目に嫌悪の色が浮かび、そして神秘的な様子で近づいて、さらに尋ねた。「お姉ちゃん、城太と深井杏奈のこと恨んでる?」
夏子は天音の視線が時々窓の外に漂うことに気づかず、この小さな子はなんてゴシップ好きなんだろうと思いながらも、辛抱強く答えた。「恨んでないわ。彼らを恨むなんて時間の無駄よ」
「それならいいわ、へへ……」天音は意味深に笑い、すぐに窓の外を指さして言った。「杏奈を見たよ」
夏子は全く気にする気がなく、呆れたように天音を見て言った。「見たなら見たでいいじゃない、彼女に何の見どころがあるの!早く麺を食べなさい!」
天音は口をとがらせて言った。「彼女がマスクとサングラスをして、泥棒みたいに病院に入っていくのを見たの。気になるじゃない」
「……」夏子はこの小さな子に完全に呆れた。「彼女がマスクとサングラスをしていても分かるの?」