第90章 幸せが再び訪れる

帰り道で、宮平一郎は自分の罪の重さを知っていたため、口を開く勇気もなかった。

須藤夏子も先ほどの出来事で、顔を赤らめたまま黙り込んでいた。

西園寺真司は夏子の気まずさに全く気づかず、右手を泥棒のようにそっと夏子の方へ伸ばし始めた。10分間の断続的な動きの末、彼の指先はついに夏子の小指に触れた。

夏子は突然触れられ、驚きの色を浮かべた星のような瞳を真司に向けた。しかし、こっそり彼女の手に触れていた彼は、まっすぐ前を見て窓の外の景色を眺めているだけだった。ただ、その長く力強い手は、彼女の手の甲へとゆっくりと這い上がっていた……

この瞬間、夏子は思わず笑みがこぼれそうになった。

真司との付き合いはまだ浅いが、彼が本当に自分を好きでいることは確かだと感じていた。

過去の出来事を経験した自分にまだ真心を捧げる勇気があるかどうかはわからなかったが、妻として、彼女は努力して挑戦してみようと決めた。

そこで夏子は頭を反対側に向け、真司と同じように景色を見ているふりをした。しかし、車の座席に置いていた手はゆっくりと開き、真司が握りやすいようにした。

真司は彼女の積極性に気づき、思わず横目で夏子を見た。薄暗い灯りの中で彼女の美しい横顔は光のように輝き、彼の心の奥底まで届いた。彼女の顔に浮かぶ恥じらいは彼を大いに喜ばせ、真司はためらうことなく夏子の手を掴み、指を絡ませた。

指先と手のひらの温もりが夏子の手に伝わり、安心感が心に染み渡った。夏子はまだ窓の外を見ていたが、知らず知らずのうちに表情が和らいでいた。彼女も横目で真司を見て、彼がまだ景色を見るふりをしているのを見ると、さらに安心感が増し、口元に微笑みが浮かんだ。

宮平一郎はバックミラーから二人の様子を見て、独身の身として傷ついた気分になった……

約30分ほど走った後、パシホテルが見えてきた。

一郎が駐車場に入ろうとしたとき、真司が突然「交差点で止めてくれ」と言った。

夏子は不思議そうに彼が車から降りるのを見て、自分も一緒に降りるべきか迷った。

真司は彼女の躊躇いを見抜き、「君と一郎は先にホテルに戻っていて。少し用事があるんだ」と止めた。

夏子はそれを聞いて動かなかったが、車が再び走り出すと、窓越しに立ち尽くす真司を見つめずにはいられなかった。彼は長い間振り返らなかった。