第120章 逆襲せよ、西園寺夫人!(8)

「はい、います」

西園寺真司の返事は短かったが、須藤夏子は大きくほっとした。

「真司、櫻井さんが長谷先生に会わせてくれるって言うんだけど、千景市に行かなきゃいけないみたい。数日滞在することになるかも。櫻井部長はすごく急いでるから、荷物をまとめて宮平さんに空港まで持ってきてもらえる?」

真司は携帯を持ちながら足元のスーツケースを見た。極めて冷酷な顔に、陰謀が成功したような笑みが浮かんでいた。

「わかった。空港の入口で待っていろ」

夏子は電話を切ると、急いでキャンパスを出てタクシーを拾い、空港へと急いだ。

ちょうど通勤ラッシュの時間帯で、街中が渋滞していた。夏子が空港に着いたのは9時33分だった。空港の入口には多くの人がスーツケースを持って立っていたが、人の出入りが激しい中でも、彼女はすぐに自分の家の輝く存在を見つけた:西園寺様!

真司は今日とても控えめな服装で、サングラスもかけていたが、彼の持つ怠惰で高貴な雰囲気は、夏子が一目で彼を見分けられるほどだった。

「どうして自分で来たの?」夏子は小さくつぶやき、急いで料金を払って車を降りた。

真司は遠くから夏子が近づいてくるのを見て、手を上げて合図した。

普通なら何でもない動作だが、夏子から見ると、真司の伝えるメッセージは他の人とは違っていた。

普通の人がこの動作をすれば、意味は間違いなく「ここにいるよ、早く見つけて!」だろう。

しかし真司がこの動作をすると、まるで「朕はここにいる、早く来い!」と言っているようだった。

そのため、夏子は急いで駆け寄った。

「どうして自分で来たの?宮平さんに届けてもらえばよかったのに」夏子は彼が日差しで額に汗をかいているのを見て、急いでウェットティッシュを取り出して真司に渡した。

しかし真司は受け取らず、顔を彼女の方に近づけた。明らかに彼女に拭いてほしいという意思表示だった。

夏子は通りがかりの多くの人が真司と彼女を見ていることに気づき、真司の我儘を許さず、さっと真司の額を拭いてから、スーツケースを取りに行こうとした。

しかしスーツケースを取ろうとした瞬間、真司に手を握られ、「行くぞ、櫻井部長はもう到着しているはずだ」と言われた。

夏子はようやく気づいて尋ねた。「あなたも行くの?」