第157章 法律音痴の須藤夏子~

「須藤夏子、これはどういう意味だ?離婚の権利を放棄するとはどういうことだ?」

西園寺真司は驚きと喜びが入り混じり、内心の動揺を抑えきれなかった。

夏子の協議書の第一条には、彼女が離婚の権利を放棄すると書かれていた。言い換えれば、彼が自ら離婚を切り出さない限り、夏子は一生彼の妻であり続けるということだ!

「意味は明白よ。あなたが私を望まなくなった場合を除いて、私はあなたと離婚しないわ」夏子は冷静に答えた。これは彼女が結婚当初から決めていたことだった。

真司の目が一瞬で輝き、さらに読み進めたが、後半を見たときに眉をひそめた!

協議書はわずか10条だったが、どの条項も彼の利益を守るものだった。彼女は離婚の権利、婚姻後の財産権を放棄していた...要するに、彼女がこの結婚で過ちを犯せば、すべてを放棄し、彼女が負担できないような代償さえ払うということだった!

この愚かな女、彼女の考えは彼と同じだったのか...

「夏子、男の冷酷さを甘く見るな。もし私がこの協議書に署名したら、お前はこの結婚において最も重要な権利を失うことになる。私がお前を手放さなければ、お前は一生私のそばにいるしかなくなる!」

真司は彼女が衝動的に決めたのではないかと心配し、もう一度強調した。

夏子は衝動で決めたわけではなかった。彼女は自分が望むものはすでにこの結婚で手に入れていることを明確に理解していた。彼女が放棄したのは、自分ではコントロールできないものだけだった。

結局のところ、彼女がコントロールできないのは真司の心だけだった。

「よく考えたわ。署名して」夏子はペンを真司に差し出した。彼女はすでに協議書に署名していた。

真司はこの協議書が不公平であることを知っていた。また、自分がこのようなことを起こさせるはずがないことも知っていた。彼は夏子を愛していたので、この協議書に署名すべきではなかった。しかし、不思議な笑みを浮かべた後...彼は突然手を上げて自分の名前を書いた。

彼が署名した瞬間、夏子はすでに真司が彼女に渡した協議書を破り捨てていた。

彼女は利己的に考えた。たとえ最終的に真司を愛せなくても、彼女は安心できるだろう...

「明日、木村に協議書を公証に出してもらおう。協議書は木村に保管してもらおう」