第160章 西園寺若様をご飯に誘う

「櫻井部長はこの業界で二十年以上のキャリアがあり、確かに経験豊富です。須藤夏子が環宇メディアと契約すれば、新人としての正式なデビューになります。櫻井部長が直接担当するのは適切ではありません。櫻井部長には良いマネージャーを推薦していただければ十分です」

西園寺真司の考えは櫻井静よりもはるかに包括的だった。彼は夏子を他のタレントと同じように扱うつもりはなかったが、夏子が他のタレントのリソースを奪うことは事実であり、夏子に敵を作らせないためにも、低姿勢を保つ方が良いと考えていた。

「つまり、私はやはり環宇と契約するということ?」

「もちろんだよ。義母は環宇の株主だし、それより良い選択肢があると思うか?」

夏子にはそれ以上の選択肢がないことを知っていたので、真司の決定に黙って従った。

しかし櫻井静は少し落胆していた。

だが櫻井が西園寺邸を去る際、真司は夏子から離れて彼女にこう言った。「櫻井部長、夏子を別のマネージャーに任せるとはいえ、夏子に関するすべての事柄は依然としてあなたに直接見ていただきたい。あなたが夏子を大切にしてくれれば、私もあなたを大切にします。鈴木森吾の副社長のポジションはすぐに空くことになるでしょう」

櫻井はこの言葉を聞いて全身が震えた!

鈴木社長のポジションが空けば、会社には必ず他の人事異動があるだろう。つまり彼女には昇進のチャンスがあるということだ!

「西園寺若様、ご安心ください。私は必ず若奥様をしっかりとお世話いたします」

真司が以前櫻井を選んだのは、彼女が陸橋夫人の人間であり、彼の役に立つと思ったからだ。今となっては、静は野心があり、かつ状況を理解する人物であることがわかり、良い協力相手になりそうだった。

櫻井は戻ると、すぐに夏子の件を決定した。

夏子はあくまで新人なので、環宇が彼女のために大々的に契約式を行うことはできなかった。結局、夏子は静かに契約書にサインし、環宇メディアに五年間の身を売ることになった。

二曲のインサートソングの録音が完了したのは三日後のことで、夏子の報酬も仕事の完了と共に手に入った。

「じゅ、十五万?」夏子は携帯の銀行からのメッセージを見て、驚きのあまり口が閉じられなかった。