第208章 ただの相互利用

「そういうことなら、深井詩乃と深井杏奈は実際に水と火のように相容れないのね。一人は前妻の娘で、もう一人は現在の妻と別の男性との間に生まれた娘。二人はお互いを良く思わないでしょうね」

須藤夏子はようやく杏奈の動機を理解し、彼女の意図をより確信した。

しかし、杏奈が彼女と詩乃を利用して互いに争わせ、漁夫の利を得ようとするのは、少し天真爛漫すぎるのではないだろうか?

詩乃はすでに西園寺真司のことで3年間の追放という苦い経験をしている。彼女がどれほど愚かでも、軽率に行動することはないだろう。そうすれば同じ過ちを繰り返すだけだ。

そして夏子自身、詩乃と争う必要があるのだろうか?

彼女は真司の合法的な妻であり、真司の心には今や彼女しかいない。詩乃と争うことなど何もない。仮に詩乃が愚かにも彼女に手を出そうとしても、真司に任せれば解決できる。しかも真司なら彼女よりもうまく対処できるだろう。

どうやら杏奈は彼女を馬鹿だと思っているようだ……

夏子は思わず自分の過去を見直してみた。確かに、以前の彼女は杏奈を信頼しすぎていた。だからこそ杏奈に馬鹿にされていたのだろう。なんて滑稽なことだろう……彼女の心からの信頼は、他人から見れば単なる愚かさでしかなかったのだ。

「詩乃は横暴な性格で、杏奈は陰険で狡猾だ。二人が互いを良く思うはずがない。それに杏奈からすれば、詩乃は本来彼女のものだった身分と愛情を奪ったと思っているし、詩乃の目には自分こそが奪われた側だと映っている。特に深井お婆様は今でも詩乃を可愛がっているからね」

「どうしてそうなるの?深井お婆様はやっと本当の孫娘を見つけたのに、なぜまだ詩乃を可愛がるの?杏奈への償いとして、むしろ杏奈を溺愛するべきじゃないの?」夏子は何か重要な情報を掴んだような気がした。

実際、杏奈が深井家に戻ってからの境遇はずっと良くなかった。このことは夏子も知っていた。杏奈がしょっちゅう須藤家に戻ってきては、須藤明良と木村眉子にこっそり不満を漏らしていたからだ。

この点も彼女には理解できなかった。

彼女が思うに、杏奈の境遇が良くなかったからこそ、当時杏奈は盛世グループの三橋羽望に近づこうとし、卑劣な手段を使ってまで彼女を犠牲にしようとしたのだろう。