第202章 来者不善

深井杏奈は深井家を離れた後、まず彼女と石川城太の新居に戻り、それから須藤夏子の学校へ向かった。

あちこち探し回った末、ようやく夏子が授業を受けている教室を見つけることができた。

時刻は午後2時15分、授業が始まったばかりだった。杏奈は直接夏子を呼び出そうと思ったが、声をかけようとした瞬間、教室内の学生が手を挙げて言った。「須藤先生、私たちに実演してもらえませんか？」

夏子はちょうど学生の発声を指導していたところで、その言葉を聞くと、優しく微笑みながら軽く頷き、自らピアノを弾きながら三つのフレーズを歌った。

教室内ではすぐに拍手が沸き起こった。

「須藤先生、高音がとても素敵です。私も先生のような音域まで練習できますか？」

夏子が今歌ったのは音域の幅が大きい三つの高音フレーズだった。彼女にとっては簡単なことだが、音楽を学ぶ多くの人にとっては非常に難しく、努力しても到達できない人も多い。今彼女が教えている12人の学生の中でも、将来それに達することができるのはおそらく1、2人だけだろう。

それでも彼女は皆を励まして言った。「今お見せしたのは、発声の方法に過ぎません。私たち一人一人の音域は違いますし、必ずしも全員がこのように完璧に高音を歌う必要はありません。自分に最も合ったものを見つけることが一番大切です。例えば田中依子さんのように、彼女の中音域はとても美しいですよ。」

学生たちは夏子の言葉を聞いて納得し、すぐに別の学生が前に出てきた。夏子は歌いながら指導し、学生の歌い方を聞いていた。

しかし教室の外に立っている杏奈には、夏子の声だけが聞こえているようだった。

夏子は10歳から音楽を学び始めた。杏奈は夏子に高い音楽的才能があることを知っていたが、こんなに美しく歌えるとは全く想像していなかった！

静かに歌う夏子の姿は、まるで一枚の絵のようで、その美しさに杏奈自身も嫉妬を感じずにはいられなかった！

彼女はずっと夏子は容姿以外の面では自分に劣ると思っていたが、この瞬間、自分が夏子に及ばないという感覚を抱いてしまった！

この感覚が彼女を異常なほど怒らせた！

杏奈は夏子が歌っている姿を邪魔したくてたまらなくなった！