約十数分後、六人の審査員が再び一列目の席に現れた。
須藤夏子は遠くから鈴木森吾と櫻井静を見かけ、二人とも良くない表情をしているのを見て、眉を少し上げた。さっき喧嘩していた二人は、もしかして鈴木森吾と櫻井静だったのだろうか?
以前、西園寺真司が彼女に話したところによると、環宇の内部には現在二つの派閥があり、一つは陸橋夫人稲垣令枝を支持するグループ、もう一つは鈴木森吾の派閥だという。そして櫻井静は陸橋夫人稲垣令枝の下で働く有能な部下で、鈴木森吾とは常に水と火のように相容れない関係だった。
もし本当に彼ら二人が喧嘩していたのなら、それは本気の喧嘩だったのだろうか?
夏子は疑わしげな目を鈴木森吾に向けた。すると森吾も何かを感じたのか、夏子のいる方向を一瞥した。
そして……森本千羽は大興奮した!
「夏子、夏子!鈴木社長がこっちを見たよ!かっこいい、超かっこいい!」
夏子:「……」
「見て見て!まだこっち見てるよ!私と心が通じ合ってるんじゃない?」
夏子:「……」
千羽がさらに興奮しようとしたとき、森吾は顔を背けてしまった。彼女は残念そうにため息をついた。まるで失恋したかのような様子だった……
夏子は呆れた表情で彼女を見つめ、しばらくしてから尋ねた。「鈴木社長ってそんなにかっこいいの?」
「もちろん!」千羽は間違いなく森吾の一番のファンだった。
「彼がかっこいいからって好きなの?」
「もちろんそれだけじゃないわ。知らないの?鈴木社長は全国のダイヤモンド独身ランキングでトップ10に入るのよ。顔がいいのはもちろん、何より品行方正で優しい人なの。まさに完璧よ!」
夏子は目を細めてしばらく考えた。確かに……千羽の言うことはすべて正しいようだ。森吾は確かにハンサムで噂もなく、人柄も穏やかで礼儀正しい。でもそんな完璧な人は、まるで偽物のように感じられ、あまりにも非現実的だった。
「あれ……あの人は誰?」夏子がまだ自分の思考に浸っているとき、千羽が再び疑問の声を上げた。
二人が気づかないうちに、演奏ホールにもう一人の男性が現れていた。ただ、後ろの照明が暗かったため顔ははっきり見えず、夏子と千羽は後頭部が前に移動し、最後に審査員席の中央の席に座るのを見ただけだった。