第249章 落水

約20分ほど上り続けると、小川が流れ落ちているのが見えた。小川の両側には広々とした草原が広がっており、まさに彼女たちが今日キャンプする予定の場所だった。

「この天気、雨が降りそうだけど、本当に今日は外で寝るの?」

女の子たちはバックパックを下ろすと、一人一人疲れて草原に座り込み、息を切らしながら空模様を見上げて尋ねた。

深井杏奈は自分でバックパックを背負う必要がなかったので、それほど疲れていなかった。彼女は笑顔で空を見上げて言った。「大丈夫よ、雨が降るとしても一時的なものだわ。ここからそう遠くないところに宿泊施設があるし、山の下にもホテルがあるから、夜に雨がひどくなったら、ホテルに行けばいいわ」

「そうね、杏奈が私たちを風雨にさらしておくつもりだとしても、石川若様は杏奈を——」

ある女の子が杏奈にお世辞を言おうとしたが、石川城太の名前を出した途端、杏奈を含む全員の表情が一瞬変わり、そっと須藤夏子の方を見た。

夏子は彼女たちの視線を感じ取り、堂々と顔を向けて言った。「どうして続けないの?」

先ほど話していた女の子は気まずそうに笑い、結局それ以上は何も言わなかった。

荷物を置いた後、四人の女の子たちはテントを設営し始めた。彼女たちは各自テントを持ってきていたので、自分たちで組み立てる必要があったが、明らかに彼女たちの中に一人もその技術を持っている者はいなかった。

夏子はテントの張り方を知っていたが、余計な手助けをするつもりはなかった。

杏奈は彼女たちが手際悪く混乱している様子を見て、表情が曇った。夏子がずっとのんびりと座って景色を眺めているのを見ると、思わず歯ぎしりし、わざと深井詩乃の後ろに歩み寄り、ある女の子に言った。「夏子はテントの張り方を知ってるけど、私から頼みづらいわ。あなたたちが彼女に手伝ってもらえるよう声をかけてみて」

詩乃はこの時点でテントに悩まされてイライラしていたので、杏奈の言葉を聞くとすぐに夏子の前に駆け寄り、言った。「ねえ、あなたテントの張り方知ってるんだって」

夏子は考えもせずに答えた。「知らないわ」

詩乃は怒り出し、口調がどんどん荒くなった。「嘘つかないでよ。さっき杏奈があなたが知ってるって言ってたわ。手伝いたくないだけでしょ」