第312章 人を怒らせる人、人を怒らせる〜

陸橋夫人と須藤夏子の訪問は突然というわけではなかった。

しかし深井家にとっては、やはり少し唐突に感じられた。

深井お婆様はあの日の結婚式で夏子に会って以来、彼女に対する気持ちが複雑になっていた。

深井家は常に西園寺家と陸橋家との良好な関係を築こうと努めており、夏子の穏やかで親しみやすい性格は、絶好の架け橋となるはずだった。しかし、夏子のお爺様が若かった頃に似ているという顔立ち——

彼女も不思議に思っていた。なぜ夏子が深井お爺様に似た顔をしているのか。しかし調査する時間を作る前に、夏子が自ら訪問してきたのだ。

「昨日、和久から西園寺若奥様が訪問されると聞いて、楽しみにしていたところです。まさか今日は陸橋夫人もご一緒とは」客人が来れば、深井お婆様は当然笑顔で迎え入れ、二人の嫁と詩乃も呼んで客人をもてなすよう指示した。

詩乃も夏子が本当に訪ねてくるとは思っていなかった。前回の結婚披露宴では、夏子を恥をかかせることができなかった。今回、夏子が自分の家に来たのだから、絶対に居心地よくさせないと誓った!

「お婆様、須藤お嬢さんが初めて私たちの家に来られたのですから、ずっとここでお話だけというわけにもいきませんよね。私が主人役として、須藤お嬢さんを案内してもよろしいでしょうか?」

詩乃が積極的に申し出て、しかもこれほど熱心だったので、深井お婆様は彼女と西園寺真司の過去を知っており、彼女が良からぬ考えを持っていることは分かっていた。しかし、自分もこのまま夏子と向かい合って座っているのは気が進まなかったので、言った。「そうね、この老いぼれと話すことなんてないわ。西園寺若奥様は詩乃と一緒に家を見て回るといいわ」

夏子は深井お婆様と詩乃の間で視線を行き来させ、微笑んで立ち上がり、詩乃と一緒に出て行った。

ちょうど抜け出す機会を探していたところだった!

詩乃は後ろについてきた執事を下がらせ、夏子を直接前の噴水池まで連れて行った。周りに人がいなくなるのを待って、彼女は噴水に金魚の餌を投げながら、意地悪な口調で言った。「須藤お嬢さんはきっとこんな大きな家を初めて見るでしょうね。ついてきてくださいね、迷子になっても私のせいにしないでくださいよ」