第319章 萌え間抜けな夏子

「深井杏奈と須藤明良夫妻は?」

「深井杏奈はまだ病院にいます。須藤明良夫妻も今、病院で杏奈を見舞っています。彼女たちは今のところ何も知りません」

「よし、引き続き病院の方を見張っていろ」

「そうそう、若様、石川城太のアシスタントが今朝早くに病院に来て、杏奈に...離婚証明書を渡しました」

西園寺真司の普段は冷静な顔に珍しく驚きの色が浮かんだ。これはいずれ起こることだと分かっていたが、城太がこんなに早く行動するとは思わなかった。「本当に離婚したのか?」

「はい、本当に離婚しました。離婚証明書の写真はすでに入手しました。若様、ご覧になりますか?」

真司の口元に少し笑みが浮かんだ。「見事だ...写真は見なくていい。だが、深井家の者たちには鑑賞させてやれ」

木村弘恪は彼の意図を理解し、すぐに電話を切った。

真司の口元の笑みが大きくなり、無意識に人混みの中から須藤夏子を探す目を向けた。そしてゆっくりと空港の外へ歩き出した。車に戻った時、夏子の姿はなかった。

夏子は走り去った後、直接車に戻るつもりだった。しかし空港のショップを通りかかった時、ふとDIYショップを見つけた。真司の誕生日プレゼントをまだ買っていなかったことを思い出し、そのまま店内に飛び込んだ。

小さな店ではさまざまなDIYモデルやT市特産の絹製品、さらに様々な工芸品の布人形なども販売していた。夏子は店内を一周し、最終的に大小二つの犬の骨の模型と、薄い黄色の絹、特色ある布製品を購入した。

彼女が駐車場に戻った時、真司はすでに車の中に座っていた。

夏子は大きな買い物袋いっぱいの品物を買っていたので、真司の目から隠すことは不可能だった。そこで彼女は思い切って駐車場を出て、外でタクシーを拾って家に帰ることにした。

そして、駐車場で15分も待ち続けた西園寺若様は、妻からのメッセージを受け取った:「先に帰るね~」

真司はそのメッセージを見て、思わず口角が震えた。そして硬い表情で宮平一郎に二言だけ言った。「発車だ。30分以内に家につけ」

一郎は運転席で身震いし、震える声で言った。「若様、この時間帯だと、空港から家までは少なくとも45分はかかります...」

真司が前方に鋭い視線を投げると、一郎はすぐに口を閉じ、車は弓から放たれた矢のように駐車場を飛び出した。