彼らの間の愛……
彼はいつから彼女の唯一の家族になったのだろう?そして彼女はいつ彼を愛するようになったのだろう?
須藤夏子の心には、彼の言葉とともに漂う霞がかったような感覚があった。心の隙間には、幸せと安心感が満ちていた。
どんなことがあっても、彼女には西園寺真司がいる。これからの毎年、彼は今のように彼女のそばにいて、満ち欠けする月を一緒に見守ってくれる。それはなんて素晴らしいことだろう……
「真司、私の心に後悔はないわ」
夏子は自ら体の力を抜き、彼の胸に寄り添い、耳元で鼓動する彼の心臓の音を感じていた。
真司の口元にはいつの間にか狡猾な笑みが浮かび、両手で夏子の腰を抱き、ついでに邪魔な二匹の犬を振り落とした。そして夏子の視線を自分に固定させ、尋ねた。「なぜそう言うんだ?」
夏子は淡く微笑み、頭を上げて空の明月を見つめ、ゆっくりと声を出して笑った。「真司、私は今やっと一つの道理を理解したの。人は本当に欲張ってはいけないのね」
真司は彼女の口調から諦めや自嘲を感じるどころか、むしろ達観と満足を感じ取り、驚いて顔を下げて彼女を見た。ちょうど彼女の見上げる瞳と視線がぶつかった。
夏子は彼と目が合うたびに、星のような深海のような彼の瞳に魅了され、目を逸らすことができなかった。満天の時の光さえも彼女の視界に入ることはなかった。彼女は思わずゆっくりと手を伸ばし、彼の端正な顔の輪郭に触れ、ふと言った。「真司、私があなたのどこが一番好きか知ってる?」
真司は彼女の離れかけた手の甲に自分の手を重ね、ゆっくりと彼女の手を掌中に包み込み、急に軽薄な口調で尋ねた。「何が一番好きなんだ?」
夏子はまだ彼の声の微妙な変化に気づかず、彼が本当に知らないのだと思い、突然彼の深い目を手で覆った。指の隙間から彼女になじみのある瞳の光が漏れ、笑いながら言った。「私が一番好きなのは、あなたが私を見る時の眼差し。知ってる?あの雨の夜のこと、よく思い出すの。あの時のあなたの眼差しは、一生忘れないわ」
真司も彼女の言葉に記憶を呼び起こされたようで、彼女を抱く腕が思わずまた締まり、あの雨の夜のことを思い出した……
彼女は知らない。実は多くの夜、彼は彼女の後ろに立ち、最も暗い場所に隠れて彼女を見ていたことを。ただ、その時の彼女は決して振り返ることはなかった。