第362章 今日は恋愛について話そう

付き合おう。

この言葉が須藤夏子の口から明るい声色で飛び出した時、西園寺真司はなぜか言葉では表現できない甘美さを感じた。

ごく普通の愛の言葉に過ぎないのに、それでも彼の心の琴線に触れ、心の底から湧き上がる喜びを抑えることができなかった。

特に彼女が話す時の瞳には、生まれながらの誠実さが宿っていて、「付き合う」という言葉がもたらす心震わせる魔力をより一層感じさせた……

「須藤夏子、聞いたんだけど、以前は君から石川城太を追いかけたんだって?」

夏子はハッとして驚いた。なぜ雰囲気が良かったのに、突然あの「死んだ人」の話を持ち出すのか。それに何が「追いかけた」だというのか?

確かに最初は彼女の方が積極的だったことは認める。でも実際には石川城太の方から彼女を追いかけてきたのだ。それにこんな昔の話を西園寺真司がどうやって知ったのだろう?

「誰が私が城太を追いかけたって言ったの!最初は彼に好感を持って、自分から話しかけて電話番号を聞いただけよ」夏子は過去の行動を少し美化して言った。

冗談じゃない、今日は何の日だ、彼女の旦那様の誕生日じゃないか。元カレの話題なんて爆発物みたいなものでしょ!

「へぇ?」この小さな女の過去について、彼ほど詳しい人間はいなかった。少しも隠さずに疑問を投げかけた。「どうして君が石川城太を追いかけた話が、城太の学校で大騒ぎになったって聞いたんだろう?君は当時海外でかなり有名だったよね」

夏子:「……」

この雰囲気、どんどんおかしくなってる。彼女は罠に落ちたのではないだろうか?

「そ…そんなに有名じゃないわよ」夏子は少し心虚になった。

実際、彼女と城太の恋愛話はかなり有名だった。

彼女と城太はスキーをしている時に出会った。あの時、彼女はぼんやりと一人で西部へスキーに行き、途中で道に迷い、財布と携帯を盗まれてしまった。幸い友人と一緒にスキーに来ていた城太に出会い、それから彼にすがりついた……

当時、城太が彼女に好意を持っていることは感じていたが、別れる時に城太は彼女に電話番号を渡し忘れた。幸い雪山の麓で記念写真を撮っていたので、彼女はその写真を持って城太の学校を回り、一人一人に尋ねた。そして彼女は有名になった……