第374章 これ、これは誰かのプロポーズ?

「見たくなければ見なくていいわよ!」

須藤夏子はこの数時間、彼にほとんど狂わされそうになっていた。この若旦那様は本当に扱いづらい!

西園寺真司は変わらぬ笑みを浮かべたまま、続けた。「須藤夏子、甘えてくれたら許してあげる」

夏子は歯を食いしばったまま動かなかった。彼の言葉が信じられるかどうか、誰にもわからない。

真司は彼女が怒って反応しないのを見て、ハンドルの上で指を動かし、言った。「映画を見に行かないなら、今すぐ家に帰ってもいいけど」

夏子はすぐに反応し、まるで座席から飛び上がりたいかのように、媚びるように彼の腕にしがみついて言った。「西園寺若様、映画を見に行きましょう、お願いします」

「キスして」

やっぱりまだ要求がある!

「まだあなたを追いかけている最中よ、簡単にキスなんてできないわ」

「じゃあ行かない」

「チュッ!」夏子はためらうことなく一気にキスをした。

真司は満足して、彼女の中央分けの「完璧な」ヘアスタイルを見て、ようやく笑いながら車を発進させ、映画館へ向かった。

夏子が映画館のような人が集まる場所に現れるや否や、すぐに「ヘアスタイル」のせいで多くの通行人の視線を集めた。もしそれが単に面白いヘアスタイルだけならまだしも、そのおかしなヘアスタイルの女性の隣には、神をも怒らせるほどハンサムな男性がいるのだ!

「真司、なんで私、たくさんの人に見られてる気がするの?」

真司は電話を切り、冷静にチケット売り場の店員からチケットを受け取り、言った。「俺がイケメンだから、彼らは俺を見てるんだよ」

夏子は眉をひそめて真司を見たが、彼は彼女の手を引いて中に入った。ちょうど数分後に始まる映画があった。

真司は最後列の一番隅に座り、夏子は不思議そうに彼を見て尋ねた。「私たちの席は前の方じゃない?」

「前列は好きじゃない」

「でも今日は映画館、人がたくさんいるわ。他の人の席を占領してしまうかもしれないわよ」

「誰もこの席には座らない。座りなさい」

「わかったわ」夏子は仕方なく真司の隣に座り、ジュースを飲みながら映画の始まりを待った。

今日の映画館は満員で、しかもカップルが多いようだった。みんな二人一組でひそひそ話をし、多くのカップルは花束を抱えていた。