有賀尚明は今、美智を見る目が変わっていた。
武田直樹は森田グループの新任社長として、その経歴はすでに人々によって徹底的に調べられていた。
彼は名門武田家族の出身で、容姿や雰囲気も武田家特有のハンサムさを受け継いでいた。それどころか、彼は青は藍より出でて藍より青し、かつて美男子と呼ばれた武田朝雄よりも優雅で気品があり、数多くの女性が彼に群がっていた。
しかし、彼は驚くほど噂一つなく、側に女性の影すら見られたことがなかった。彼のアシスタントさえも男性だった。
誰も美智が彼と関わりがあるとは思っていなかった。
尚明はもはや美智を普通のアルバイト従業員として扱うことができなくなった。
彼は武田直樹の言葉を一言一句そのまま繰り返し、そして口を閉じ、静かに美智の返答を待った。
美智はしばらく考えてから、ため息をついた。「私が直接彼と連絡を取ります。匿名で。もし彼が尋ねてきたら、私は会社の人間ではなく、外部から雇った人で、あなたは私を知らないと言ってください。」
尚明は同意した。彼は動画の修復に全く期待していなかったが、とりあえず美智にやらせてみるしかなかった。
美智は自分のオフィスに戻り、パソコンから武田直樹に匿名のメッセージを送った。
「有賀尚明さんの紹介です。あなたが修復したい動画があると聞きました。」
直樹の返信は早かった。「あなたは誰ですか?」
「それは重要ではありません。重要なのはあなたの動画です。まず送っていただければ、修復可能かどうか確認します。」
「動画は極秘です。見知らぬ人に見せるわけにはいきません。本当の身分を明かしてください。」
「それならば結構です。武田社長は他を当たってください!」
今回、美智は直樹からの返信をしばらく待たなければならなかった。「メールアドレスを教えてください。一部を送りますので、まずあなたが修復できることを証明してください。その後で他の話をしましょう。」
美智は新しく登録したメールアドレスを彼に伝え、すぐに動画の一部を受け取った。
動画は短く、おそらく重要でない部分だけを切り取って彼女に送ったようだった。
彼女は確認してみると、修復の難易度は確かに高かったが、以前似たような修復経験があったため、不可能ではなかった。