家庭医は困った様子で武田直樹を見つめた。患者が動くので、これ以上処置を続けられなかった。
直樹は前に進み、彼女の傷を避けながら彼女を押さえた。「動かないで、薬を塗るから」
「必要ないわ!何を良い人ぶってるの、離して!」
しかし直樹は彼女を押さえたまま、医者に薬を塗るよう合図した。
医者は手際よく薬を塗り、その後、美智の背中に何重にもガーゼを巻いた。
美智はようやく自分の上着が完全に脱がされていることに気づいた。
彼女は再びうつ伏せになった。
医者は仕事を終え、薬とガーゼを置いて、急いで部屋を出て行った。
彼女が不真面目なわけではなく、単に直樹の圧迫感があまりにも強すぎて、彼の前で仕事をするときは息をするのも慎重にならざるを得ず、とても苦痛だったのだ。
寝室の中は、空気が凍りついたようだった。
美智は痛みで全身から冷や汗が出ていて、直樹とは一言も話したくなかった。
直樹は彼女の背中のガーゼから滲み出る血を見て、なぜか焦りを感じていた。
なんて役立たずの医者だ、傷の治療もまともにできないのか!
長い時間が経っても、血が染み出る様子は全く止まる気配がなく、彼はついに口を開いた。「おばあさんに電話して、来てもらおう。背中からずっと血が出ている」
美智は驚いて急いで言った。「おばあちゃんには知らせないで!」
直樹は眉をひそめた。「どうしたんだ?お前はもう死にそうなのに、まだ来てもらわないつもりか?」
「あなたが死んでないなら、私が死ぬわけないでしょ!おばあちゃんが知ったら心配するわ。おばあちゃんを呼ばないで」
美智はそう言いながら、歯を食いしばってベッドから起き上がり、降りようとした。
直樹は彼女の露出した肩をぐっと押さえた。「何をするんだ?!戻れ!」
美智は痛みで彼を押しのける力もなく、彼の腕に頼って自分を支えるしかなかった。「服を持ってきて、家に帰るわ。自分の薬を使いたいの」
直樹は怒り心頭だった。「頭がおかしいのか?こんな状態でどうやって帰るつもりだ?」
彼は片手で美智の肩をつかみ、もう片方の手で彼女の足を持ち上げ、彼女を顔を下にしてベッドに戻した。
美智はうつ伏せになったまま、泣き出した。