「義姉さん……」
「香織、もう義姉さんって呼ばないで。あなたの義姉はすぐに別の人に変わるだろうから、美智って呼んでくれていいわ!」
「それはダメです。おばあちゃんが言ってたわ、兄の嫁は美智さんしか認めないって。私はおばあちゃんの言うことを聞くから、義姉さんも美智さんだけです!」
美智は苦笑いした。「おばあちゃんが私をかわいがってくれてるのは知ってるわ。まさかあなたまで私の味方になってくれるなんて、ありがとう。でも、本当にもう義姉さんって呼ばなくていいのよ」
武田香織はうなずいたが、しばらくするとまた忘れてしまい、「義姉さん、この写真の中で、あなたのドレスにどうしてこんな大きな足跡がついてるの?」と声をかけた。
「直樹が踏んだのよ」
「え?兄さんひどすぎる、どうして義姉さんのドレスを踏むなんて!」
「彼の足元をよく見てみて」
「これは——あなたのバッグのストラップ?」
「そう、彼は私のバッグのストラップを踏んで、私がバッグを取れないようにして、離婚協議書にサインするよう強要したの」
「兄さん最低!」
香織は義憤に駆られた。「兄さんがそんなに最低なら、義姉さんはしっかり懲らしめるべきよ!」
「彼のズボンについてる足跡見えた?」
「見えたわ」
「私が蹴ったの」
香織は彼女に親指を立てた。「義姉さん、やったね!」
美智は笑いながら首を振った。「私も追い詰められたのよ」
「義姉さん、兄さんのこと怖くないの?」
香織の声には隠しきれない驚きがあった。「まさか蹴るなんて!知らないでしょうけど、私は小さい頃から兄さんが怖かったの。長男の兄よりずっと怖くて、笑ったことなんてないし、お正月に集まる時も、私は長男の兄にしか話しかけられなくて、次男の兄には話しかける勇気がなかったわ」
「前は私も怖かったけど、今はもう怖くないわ。だから蹴る時も心理的な負担はなかったわね」
「義姉さん、もしかして兄さんのこと長い間好きだったの?」
美智は少し驚いた。「どうしてそう思うの?」
「私には分かるわ。前に義姉さんがまだ嫁いでなかった頃、よくおばあちゃんに会いに来てたでしょ。兄さんも来るって聞くと、目が特別輝いて、笑顔も特別甘くなってたわ」
美智は思わず頭を下げた。苦笑いが止まらなかった。「そんなに分かりやすかった?恥ずかしいわね」