第46章 恥辱

美智は突然笑い出し、すぐに涙が出るほど笑った。

彼は本当に青木佳織のことを大事にしているのだ。彼女が「不倫相手は誰からも嫌われる」と一言言っただけで彼は激怒し、急いで彼女を守り、妻である自分のことなど全く眼中にない。

自分との離婚では、けちくさく賠償金を100万円しか出さないくせに、佳織のためとなると1000万や2000万円をすぐに出す。ただ彼女を喜ばせるための秘方を買うためだけに。

美智の声は冷たく硬かった。「今日、武田社長にはっきり言っておきますが、この世の中には、あなたがお金を出せば何でも買えるというものではありません!秘方が欲しいなら、自分で研究開発してください!私の秘方は誰に売るとしても、あなたには絶対に売りません!」

武田直樹の傲慢さがほんの少し露わになった。「俺以外に、お前の秘方を買える者はいない!俺にはお前の秘方を無価値にする方法がいくらでもある!」

美智は涙を拭き、作り笑いも消えた。「あなたたちは薬方を開発する能力がないから、私を脅迫して圧力をかけるの?武田直樹、あなたは路地裏のチンピラになったの?そんなに格が下がったの?それとも、お兄さんの方が本当の名家のお坊ちゃまらしいから、あなたは彼に及ばないってこと?そうでしょう、青木さん?」

佳織はハッとして、まさか自分に矛先が向けられるとは思っていなかった。思わず首を振った。「いいえ、直樹はとても素晴らしい人です!」

美智はうなずき、何かを悟ったように言った。「ああ、つまり武田瀧尾は弟ほど良くないって言うの?あなたも彼に対して本当の気持ちなんてないのね。彼は本当に可哀想。」

今度は佳織が慌てた。「違います、勝手なことを言わないで!直樹、私は…」

直樹は彼女に手を振り、もう言わなくていいと合図した。

彼は冷たく美智を見つめた。どうして前にはこんなに人を怒らせるのが上手いとは気づかなかったのだろう?こんなに的確に他人の神経を踏み、痛いところを突くなんて!

演技が上手すぎる。以前の優しさや素直さは全て演技だったのだ!

「美智、なぜまた佳織を困らせるんだ?彼女を刺激して、悲しませたいのか?それとも恥をかかせたいのか?いいぞ、本当に死に物狂いだな!本来なら離婚で多少の賠償金を得られたはずだが、今となっては一銭も手に入らないぞ!口先だけで勝ったつもりか、自分の力量も知らないで!」